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2018年3月20日

悪意とこだわりの演出術

藤井健太郎/2016年/双葉社/四六

悪意とこだわりの演出術TBSで放送されている『水曜日のダウンタウン』という番組が好きで、Youtubeにアップされている過去作品も見まくるくらいハマっている。あるとき、この番組が一人のTBS社員の総合演出によって作られていることを知り、しかもその人が本を出しているというので読んでみることにした。この手の本を読むのはおちまさと氏の本以来だと思う。

すでに現役を終えた演出家が昔話を書くのではなく「リアルガチな現役の演出家」だからこそ書いたという著者の思いに打たれた。こういう感覚をちゃんと持っているのが凄い。そしてその感覚はダウンタウンにも共通するところだ。現役でいまこの瞬間にガチで笑いが取れているかということへのこだわり。それはプロ野球のようなプロスポーツ選手が持っている現役感覚と似たガチさだろう。

自分の職場にはそれがなく、どうやって立ち振る舞ったら損しないかみたいなところでの調整ばかりが行われていて辟易する。テレビ局にはまだこういう調子に乗ったディレクターがいて、その人の振る舞いが仕事の中で昇華されて評価される仕組みが残っているようだ。そのことに少しだけ希望を覚える。これすらなくなって、エリートによる手堅い作品だけが量産されるようになり、手堅さの部分が評価されるようになればいよいよテレビのコンテンツは、エンターテイメントとしての役目を終えるのだろう。

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