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2017年12月8日

ブラック・メタルの血塗られた歴史

マイケル・モイニハン、ディードリック・ソーデリンド/訳:島田陽子
/2009年/メディア総合研究所

ブラック・メタルの血塗られた歴史僕はメタラーではないので、この本を読むまでブラックメタルの存在など全く知らなかった。デスメタルやスラッシュメタルのようなジャンルの音楽を少しだけ知っていた程度なので、音楽的な何やらについては最後までしっくりと体に落とし込むまでには至らなかった。一応、Youtubeで紹介されていたバンドの音は聴きながら読んだんだけどね。

この本はブラックメタルの音楽よりもその周縁部分にある思想や文化みたいなところにスポットを当てているので、ブラックメタルの音楽的な部分がしっくりきてなくてもまぁいいのかなとも思う。

ブラックメタルが国家主義的な思想(ネオナチのような思想)と極めて近いところにあり、サタニズム(悪魔主義)をヴィジュアルイメージだけでなく、思想においても取り込もうとしていたところが興味深かった。

日本でも近年、在日朝鮮人の人に対するヘイトスピーチを行う排外主義者のコミュニティが勢力を拡大しているが、共通する部分は徹底的に敵を攻撃するという点だ。ブラックメタルの場合はキリスト教であり、ネトウヨの場合は日本国憲法ということになるのかもしれない。移民排斥・アンチポピュリズムという点でも共通している。

成熟した社会では生活の利便性は向上している一方で閉塞感も強くなる。その閉塞感を打ち破ろうとする力が加わったとき、そこで生まれる化学変化にはある種の人たちを強烈にひきつける何かがあるのだろう。排斥主義や破壊衝動、悪魔主義など社会で忌み嫌われる存在であればあるほどそれ自身が本質に思えてくるような逆のロジックがコミュニティの中心にある。そこから建設的なものが生まれるわけではなく、敵と味方を判別して相手を攻撃し続けることで維持されるコミュニティだ。

現代のコミュニティを考える上で、ブラックメタルのムーブメントはかなり面白い情報を僕に与えてくれた。次はちゃんと音楽のほうも聴かないとな。

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