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2017年12月22日

隠れた脳

シャンカール・ヴェダンタム/訳:渡会圭子/2011年/インターシフト/四六

隠れた脳なかなか面白い本だった。この面白いという感覚は僕が漠然と思っている感覚を補強してくれていることからくる面白さで、最近よくネットで言われる「人は自分のものしか見たくないし、ネットはそれを補強するツール」としての側面が強かった。

キーワードは「バイアス」だ。バイアスというのは思い込みや思想などから考え方が偏っているという意味で用いられる言葉で、僕たちは生活の中で様々な価値判断をするときこのバイアスによる影響を避けられないというのがこの本に書かれている骨子である。目次を見れば同書で紹介されているバイアスの内容がわかるので、読まなくても大枠の内容はつかめると思う。

池谷裕二『 単純な脳、複雑な「私」 』を読んだあたりから自分が思いつく考えなど大したことがないと思うようになり、その思いは日々強くなっている。それは諦念とかそういうことではなく、日々生きている中で迫られる様々な価値判断は最終的に自分で決定しているようでその時々の様々なバイアスの影響をもろに受けてしまっているということだ。そしてその影響は避けられそうもない。

だからどうでもいいや…と思っているわけでもなく、そうした影響を前提に価値判断をしているということを受け入れるしかないということだ。そのように考えるようになった頃から自分というものを少し客観的に見れるようになってきたし、仕事もずいぶん客観的に見れるようになってきたように思う。

【目次】
第1章 自分の脳にだまされる(認知のバイアス)
第2章 相手への評価は無意識に決めている(コミュニケーションのバイアス)
第3章 道徳は隠れた脳が司る(倫理のバイアス)
第4章 思わず知らず偏見は忍び入る(文化のバイアス)
第5章 男と女は入れ代わらなければわからない(ジェンダーのバイアス)
第6章 なぜ災害時に対応を誤るのか?(集団のバイアス)
第7章 「トンネル」にはまるひとたち(つながりのバイアス)
第8章 一匹の犬が多数の犠牲者より同情を集めるわけ(数のバイアス)

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