bemod

2017年12月22日

夢を売る男

百田尚樹/2013年/太田出版/四六

夢を売る男かつて自費出版の会社で働いていたことがある身として他人事とは思えない面白さだった。『永遠の0』問題でイデオロギーに絡め取られて偏狭なナショナリズム親父のキャラが固定化された感のある百田氏だけど、エンタメ王道行くような素晴らしい本を書くね。

この本で1点注意しないといけないのは、自費出版ではなく共同出版・協力出版というスタイルのビジネスについて書いているという点だ。このビジネスはかつて文芸社や新風舎(倒産)などが一大ブームを作り上げたスタイルで、会社と顧客が制作費を折半しようという商業出版と自費出版の間のようなものとして位置づけられている。

顧客側からしたら自費出版よりは商業出版に近いため、プロの作家になりたくてもなれない人たちがこの出版方式に興味を持ったのだ。しかし、実際には出版社側はほとんど負担せず実質は自費出版である。悪質な商売だとしてニュースになったこともあり、このブームも今では沈静化している。

この作品で書かれていることはほとんど実際にありえる話で、だからこそ面白かった。褒められた商売ではないだろうが、「顧客の欲望をかなえる」という意味においてこの商売は決して文脈をはずしているとは思えない。商売の核が顧客が本を出すことではなく顧客が書いた文章が認められることにあると考えれば、「認め屋」としてのビジネスはこれからも可能性を持っているようにも思える。

丸栄出版の牛河原は、綿矢りさ『 夢を与える 』よりは夢を与えていたように思う。

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