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2017年12月26日

家族喰い ― 尼崎連続変死事件の真相

小野一光/2013年/太田出版/四六

家族喰い ― 尼崎連続変死事件の真相気味の悪い本だった。

尼崎連続変死事件の裏側にある圧倒的な寂しさと暴力と諦念。すべての事件は角田による「いちゃもん」から始まる。いわゆるクレーマーというやつで大抵の場合は金銭を要求するだけで終わるのだが、相手が気の弱い人間と見るやとことんまで追い詰めていく。この追い詰め方が凄まじい。

さらに事件化させないためにどんどん養子縁組をさせて家族内の問題として警察の追及を交わす手口も巧妙だ。この手法には暴力団組員による入れ知恵があったそうだが、それでも彼女の執拗さには恐怖を感じずにはいられなかった。

この本を読んでいて一番感じるところは「何でそこまでやるの?」ということだろうと思う。普通はそこまで追い込んだりしない。ところが彼女はどこまでも追い詰めていく。この本には彼女の弟のことも書かれていて、その弟もある女子大生を性奴隷にして執拗に支配し続けていた。この姉弟にある闇を感じると同時に、人間というのはこういう闇に簡単に堕ちていくのだなとも思った。

僕ならどうか? となると、僕はならない可能性が高い。というのも主犯格の女は日常的にクレーマーとして振る舞っているのだが、その時に自分が支配できそうな相手かどうかを常に峻別しているからだ。例えばある女子大生に狙いを定めたとき、その女がヤクザに支援を頼んだとわかった途端に掌を返して謝罪文を送るというようなこともしている。

狙われるのは優柔不断でお人よしなタイプの人間で、主犯格の女は常にこのタイプの人間を探し求めて追い詰めていた。はっきりと「NO」と言えない日本人の特徴を悪い方向に利用しているという点でもたちが悪い。

インターネットの発達と少子高齢化の影響を受け日本ではコミュニティへの意識が希薄になっている。そうした時勢と逆行するように角田は圧倒的に強いコミュニティを求めていた。それは新興宗教のそれとも近い。角田が事件の中心であることは間違いないが、その大きな求心力に引き寄せられている弱い人たちがたくさんいたことについても深く考えさせられる本だった。

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