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2017年12月27日

モンスター ― 尼崎連続殺人事件の真実

一橋文哉/2014年/講談社/四六

モンスター ― 尼崎連続殺人事件の真実尼崎連続殺人事件があまりにも深い話だったので小野一光『 家族喰い 』に続いてもう一冊読むことにした。同じ事件を扱っているため被っている点も多く目新しさはなかったものの、社会学的な考察が入っていたのでそこはなかなか面白かったかなと。ただし、サラリーマンのおっさんが興味本位で読む本としては『家族喰い』のほうが面白いと思う。

この本を読みながらコミュニティの在り方について考えていた。数年前に興味を持っていたコミュニティ関連の話題というのは僕の中で今も重要なトピックスとして頭に残り続けている。僕自身独身ということもあって、40歳を超えたときにどうやって生きていけばいいのか?という不安が常にあるからだ。

尼崎連続殺人事件の裏側には圧倒的な寂しさというのがあった。角田の作り上げたコミュニティには暴力が支配する異常なカルト集団であるという一方で、冷たい社会から感じる寂しさを埋めてくれるあたたかさがあったのだろうと想像する。特に日本人というのは優しさと同じレベルで精神的に誰かに依存したいという弱さを持っていると思う。その弱さを埋めてくれる存在としてすべてを引き受けてくれる強いおばちゃんには吸引力があったのかもしれない。

日本の伝統でもあった村社会の共同体が崩壊して久しい。それを埋めるようにネットによる弱いつながりが増えているように思うが、まだまだ未成熟である。つながりの薄い社会の中で家族というコミュニティが最後のよりどころだと考えれば、養子縁組を繰り返して疑似家族を拡大させていった今回の事件というのは、良い方向に作用していたかもしれないという別の未来の可能性も留保しておけると思う。それがカルトなのか何なのかは僕にはわからないが、コミュニティの問題を考える上で一つの手がかりを与えてくれたようにも思った。

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