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2017年12月27日

ナチス狂気の内幕 ― シュペールの回想録

アルバート・シュペール/訳:品田豊治/1970年/読売新聞社/四六

ナチス狂気の内幕 ― シュペールの回想録久しぶりに読むのが大変な本に挑戦した。

この本はヒトラーの建築家であり軍需大臣として活躍していたナチス幹部が書いた唯一の回想録らしい。ニュルンベルク裁判においても幹部として唯一自己の戦争犯罪を認めており(wikipedia)、そういう意味でも貴重な本だろうと思う。ところがこの本は文庫化されておらず、僕の住んでいる地域では図書館にも置いていなかったため中古本を手に入れた。定価より高くなっていた。

シュペールは建築家でありヒトラーとは建築を通じて交流があった。僕がちびちび勉強している 戦争と芸術 の観点から見て彼らの交流には何やら見出す点があるだろうと思って読んでいたが、特にトピックスになるようなところはなかったように思う。

シュペールは総統官邸や国家党大会広場などを設計しており、ベルリンを新たな都市に生まれ変わらせるための理想をヒトラーと共に描いていたが、その裏側にある暴力に対しては無頓着に振る舞っているように感じられた。このことは軍需大臣になったあと軍需工場に捕虜を強制動員することへの思慮のなさにもあらわれているように思う。

そうした暴力性が彼の建築にどのような影響を与えていたか僕にはわからない。与えていたかもしれなしい、与えていなかったのかもしれない。例えば、ピラミッドや大仙古墳のような大きな建築物というのは権力の象徴でありそこには強制的に多くの人間を動員したという意味で大きな暴力が秘められている。そのため大衆の合意に基づく民主主義に覆われた現在の世界では大きな建築物を作ることが難しくなっている。

そういう意味では独裁者ヒトラーのもとでベルリンという大都市を自分の美意識に基づいて設計していく可能性を持っていたという点で、芸術と戦争(暴力)のベタな接続があったはずなのだがこの本の中ではそうした視点での価値を見つけることはできなかった。

ナチス関連の美術事件として最も有名なのは退廃芸術展と映画にもなったナチ略奪美術品の奪還作戦あたりなので、戦争と芸術 の勉強としてはそちらを読むほうがしっくりくるのかもしれない。あとは美術品収集家としても有名だったゲーリングの足跡を追うことだろうか。

(関連)戦争と芸術

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