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2017年12月28日

女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち

仁藤夢乃/2014年/光文社/新書

女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち2010年代になって秋葉原を中心に爆発的に増えたJKビジネスで働く少女たちの実態に迫ったルポ。若い女性ライターによる取材だったこともあってか少女たちの声がとてもリアルに書かれていた。JKビジネスというのはバリエーションがたくさんあってその輪郭を正確に示すことが難しいが、ひと言で言えば女子高生である自分自身を商品にした対面ビジネスである。

女子高生と一緒に散歩したり喫茶店で話したりカラオケで歌を歌ったりという軽度な接触サービスを中心にしているが、この場所が売春の温床になっているとして社会問題化している。そのため2013年頃から警察の一斉摘発が行われ法整備も進んでいる。

僕がこの問題に関心を持ったのは自分がJKビジネスの顧客だったからではなく、ドルヲタ経由で行ったことのある撮影会と同じ業態の会社が上記のJKビジネスとひとくくりにされて摘発されたからである。例えば神奈川県の撮影会では女子高生と男性が密室で接客することを強要され、そこには監視カメラが取り付けられて女子高生が逃げられないようになっていたとして労働基準法違反か何かで摘発されたのだが、カメコの立場から見ればどう考えてもその監視カメラは顧客を監視するためのものであった。

僕はこの時に少し疑問を感じていたのだが、この本を読んでその時の疑問は解消された。僕が思っていたよりもJKビジネスは深化し根付いていたからだ。世間はアイドルブームだと女子高生たちのアイドル活動をもてはやす一方で、そのすぐ隣にはそれと同じ規模かもしくはそれ以上の規模で女子高生を売りにしたビジネスが流行していたのである。

この本を読みながら僕はいろいろなことを考えさせられた。能力の無さゆえにそれを上手く言語化できないのが残念だが、忘却録としてとりあえずメモ程度に思いを残しておきたい。

まず、今後の日本は少子高齢化が止まらず、また技術革新などの影響を受けて多くの人たちが対面ビジネス(介護や接客などを含む)をすることになる。その中で、売春を中心とした性風俗産業は相対的に大きな価値を持つことになり、JKビジネスはそのバリエーションの一つだと考えることができる。

著者も書いていたが、このビジネスの中にあるノウハウは表の社会の側(例えばセーフティーネットを整備する行政など)の人たちも利用することはできると思う。またアイドルビジネスも広義の意味ではJKビジネスと大差がなく、一律的な規制よりも上にかいたような社会状況を踏まえたうえで新しいコミュニケーションのインフラは整えられていくべきだと思う。

心のケアの問題はいつの時代も存在する。だからJKビジネスだけを取り除けば解決するという問題ではない。「傷ついている私たち」という視点に立つことは重要だが、自分中心に社会を見続けると「自分の不幸=社会が悪い」という構図だけが相対的に自分の中心になり続けてしまい、そこから抜け出せなくなる危険性がある。これではいつもの若者問題と何ら変わらない。だからこそJKビジネスの裏側にある問題を普遍的なテーマとして捉え、様々な年代の人たちの意見をピックアップしつつ少しずつ解決の糸口を模索していくほかはないのだと思う。

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