2017年12月28日
消された一家 ― 北九州・連続監禁殺人事件
豊田正義/2009年/新潮社/文庫
凄まじく気持ちの悪い本だった。
通電によるリンチが凄惨だし、死体を解体する様子があまりにエグい。このブログを書いてる2015年3月17日現在、世界ではISというイスラム教スンニ派の過激派組織が捕虜の首切り動画をネットにアップロードして話題になっているが、この本に載っている死体の解体の様子はもっとグロい。
血抜きをした後に魚をさばくように体をバラバラにし、さらにその肉片を煮込んだりミキサーにかけて粉々にしたりして、完全に解体した状態で遺棄するという徹底ぶりだ。こんなことがまともな人間にできるのだろうか? しかもそれを実の親子や夫婦がやっている。僕はこの本を読みながらずっと「???」が止まらなかった。
一番読んでいて辛かったのは、何の罪もない子供2人があまりにも無残に殺されたことだ。しかも姉のほうには弟を殺す手伝いもさせている。小野一光『 家族喰い ― 尼崎連続変死事件の真相 』と同じような感覚で読み始めたが、あちらはそのベースに寂しさがありコミュニティを考える上で考えさせられる部分が多くあったが、こちらの事件にはそうしたものが少なく、ひたすら詐欺師&サイコパスのマインドコントロールに引きずられていっている感じだった。
人の弱みに付け込むという点において主犯の松永は天才的だった。人の弱みというのは逆を返せば日本人の優しさでもある。彼はその優しさに対して良心の呵責というものがなかったのだろうか? 本の中では死体の遺棄現場は見なかったと書かれているので少しはあったのかもしれない。しかしその少しの良心も嘘に嘘を塗り固めた彼自身の人生においてあっさり消去されてしまったのかもしれない。
とにかく悲しいを通り越してただただ悲惨な事件だった。
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