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2017年12月28日

桶川ストーカー殺人事件 ― 遺言

清水潔/2004年/新潮社/文庫

桶川ストーカー殺人事件 ― 遺言週刊誌『フォーカス』の記者が警察よりも早く殺人犯を特定し、警察の事件の隠ぺいを暴いたノンフィクション。素晴らしい本だった。彼はいま日本テレビにいてそこでも『 殺人犯はそこにいる:隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件 』という素晴らしい仕事をしている。

ともかく考えさせられる事件だった。不条理なストーカーによる殺人事件という面と責任逃れに終始した警察の隠ぺい工作という面があり、この本ではその両面を明らかにしている。

この事件が問題化したことでストーカー対策の法律ができるわけが、それでこうした事件が防げるのか?となるとそれもちょっと疑問だ。桶川の事件にしても警察が動いていたら助かったのか?というとそれも絶対そうだとは言い切れず、適切な解が存在しないことがこの問題の困難さだろう。

警察の隠ぺい工作に関しては、日本社会の負の側面そのものでもある。事なかれ主義で何とか穏便に矛を収めたいという日本人特有のマインドが強く出ているだけに他人ごとだとは思えない。上尾署の事件に対する対応はとてつもなく酷いものだったが、自分の周囲を見回しても上尾署のような対応を取る人は少なくないと思ったし、それだけに今回のように隠ぺい工作が白日の下にさらされたことは価値があると思った。

清水氏はこの事件を追いかけている途中でご自身の娘さんを事故により無くしていたそうだ。

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