2018年1月5日
資本主義の終焉と歴史の危機
水野和夫/2014年/集英社/新書
資本主義社会の永遠に経済成長していくモデルはいつか必ず破綻する。日本はバブル崩壊以降、長いデフレに苦しんできた後、アベノミクスによって見せかけの景気回復路線をやっているが、そもそも世界には経済成長をするための場=周辺を見つけることがとても難しくなっていることを直視しなければならない。金利ゼロ=利潤率ゼロという現実を受け止めて、資本主義に代わる新しいシステムを構築する必要がある。
…というようなことが書かれている本だった。その昔、荻上チキ氏が昨今は経済成長しないモデルを推す学者が見受けられるが、それでも社会は経済成長する必要があると訴えていて共著『経済成長って何で必要なんだろう?』を出していた。『経済成長って~』が出たのが2009年だったので、その5年後に今回の本が出ていることを考えると、事態の深刻さというのは僕が思っている以上なのだと思う。
本の中で日本の国債は2017年をピークにして下降曲線を描くと言われていて、ネットで調べてもそのような言説が多数見受けられる。日本は1000兆円くらいの借金を抱えながらも日本人自体が貯金も多くしていて国債という形でそれを置き換えているから何とかなっているというのが今であるとするならば、国債が暴落するということは日本人が銀行に預けているお金が単純に戻ってこないか、円の価値が下がってしまうということを意味している。
現在の日本の台所事情はハンドルを切ったら一気にそっちに流れていってしまうくらいセンシティブな状態だということは普段の生活の中でも何となく実感できることだ。しかも僕の場合は自分の貯金を金融資産に買えていたりするのでこの問題についてまったく無関係でもない。しかも厄介なのはこうした事態が僕の資産を増やす可能性も減らす可能性も持っているということだろう。結局のところはみんなこうした社会の変化を敏感に感じ取りながらも、その変化によって自分が得するか損するかということしか考えていないということなのだろう。
大きなパラダイムシフトに協力してなんとか資本主義の終焉を乗り越えたいという思いは誰もが持っているだろうが、その波の中で損する人と得する人がでるのが現実であるならば、自分だけは得する側にまわりたいと思う人は少なくない。おそらく僕もそんな一人で、だからこそ世の中は膠着状態(つまり資本主義の終焉状態)から抜け出せないのだ。
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