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2018年1月5日

高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職

紗倉まな/2015年/宝島社/四六

高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職著者の素晴らしいところは現役高専生時代にAVデビューし、そのことが学校でバレて問題になった後も学校に在籍し続けてちゃんと卒業したことだろう。職員会議で「君は紗倉まなだろう」と問い詰められた後も「違います」と否定し続けたと言うが、誰がどう見てもバレバレなわけで、そんな中で普通の学校生活を送れたというのは高専という学校の特殊性ゆえだろうか。このエピソードをもっと掘り下げてほしかった。

それ以外の部分は単体女優のエッセイという感じだった。AVの世界には企画女優・企画単体女優・単体女優というランク付けがあり、彼女は最高位の単体女優である。人気の面でもヒエラルキーのほぼ頂点近くにおり、そういう目線で見たAV業界であることは留意しておく必要があるのだろうと思う。

この本の中でも彼女自身が企画女優は大変だと思うと書いている。それはスタッフの扱いだけでなく収入の面も大きいはずだ。単体女優は少ない仕事で大きな収入があるので、時間に対する感覚がかなり緩やかだ。売れている芸能人がそれ以上の時間感覚と収入を得ているのかもしれない。

ただ、彼女のデビュー作はそれほど高待遇ではなかった。単体女優ではあったがいきなり顔射もあり、特別扱いされていない普通の単体女優という感じだ。そんな彼女が持ち前の明るいキャラクターで後に人気を獲得していったことから、デビュー作が一番人気になる通常のAVとは違う経路を辿っていることは間違いない。普通はデビュー時の人気が最も高く、本数を重ねるごとに人気は落ちていくからだ。そうなっていないのは彼女の努力や才能もあっただろうし、AV業界の中の新しい価値観(使い捨てではなく長く活躍してもらうという)なのかもしれない。

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