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2018年1月5日

ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を

菊地敬一/2005年/新風舎/文庫

ヴィレッジ・ヴァンガードで休日をヴィレヴァンの創業者が書いた本。文庫化されたのは2005年だが最初に発行されたのは1997年なので、その当時の書店を取り巻く空気を意識しつつ読むのが良いと思う。

僕の世代でもすでにヴィレヴァン=雑貨屋というイメージが強く、書店だと思っている人はそれほど多くないだろう。実際の売り上げも、おそらく本の売り上げよりもそれ以外の雑貨の売り上げのほうがはるかに大きいと思われる。それでもヴィレヴァンは書店であるということにこだわって書かれているのにはそれなりに意味があるのだな…ということをちょっとだけ感じた本だった。

それは日本の知の集積の果てに生まれた雑貨屋だということだ。これは輸入ものだけを扱うアメリカ雑貨の店とは根本的に異なる。ヴィレヴァンのような店というのはコンセプトがとても重要なだけに、その微妙な違いというのが実はとても大きいのではないのかなということを強く思った。

例えばタワーレコードは本家アメリカではすでに潰れているが日本法人は今でも存続している。その理由は日本のタワレコがただのCDショップという枠組みを超えて、日本文化を租借した形で日本流の音楽環境のコンセプトを提示しているからだろう。

創業者の菊池氏は典型的なサブカリストというか、雑学に対する深い知識があり、そのことが上手い形で店のコンセプトに反映されている。本が売れなくなった時代に新しい価値観を提示したという意味においてゼロ年代にヴィレヴァンが果たした役割はとてつもなく大きい。ただし今後もそれが続くかは微妙だ。

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