bemod

2018年1月10日

折り返し点 ― 1997~2008

宮崎駿/2008年/岩波書店/四六

折り返し点 ― 1997~2008宮崎信者としては読まざるを得ない一冊。かなり分厚い本だったので買ったまま積読されており、気付けば8年もの歳月が過ぎていた(笑) 前作の『出発点 ― 1979~1996』はライトな宮崎ファンでも楽しめる内容だったが、本作は僕のような重度の信者でないと読むのがしんどいかなと思ったのが率直な感想。

講演録の書き起こしや対談がほとんどで、それも時系列順に並んでいるだけなので内容の重複も凄いし読んでいて一貫性も薄い。もちろんこれは本人が多忙なことと、メディア露出が極端に少ないせいで、まれに登場した媒体からの内容を拾い集めているためにこういう本になったのだ。

信者としては少しでも宮崎監督の声を拾いたいからこういうまとめ本はありがたいが、おそらく宮崎監督の映画がDVD化される時に同時にリリースされる制作現場のドキュメンタリーを見たほうがはるかに身になるような気もする。というのも、1999年以降の宮崎監督の主張というのはほとんど一貫しており、どのインタビューでもそれを繰り返しているからだ。

宮崎監督の発言はどれも共感できるものが多く(だから信者なわけだが)、そうした後期の宮崎監督の思想をサクッと知りたいなら『 風の帰る場所 ― ナウシカから千尋までの軌跡 』を読むほうが良いだろう。

今回の本の読みどころは宮崎監督が久石譲さんに音楽制作の依頼をするとき、作品のイメージが伝わるように詩を書いていて、その詩が公開されていることだろうか。あとは作品の構想段階でのあらすじやらキャラクターや映像に関する考え方が読めるのもよかった。

そういう制作論や技術的ノウハウだけを集めた別の本を読んでみたい。

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