bemod

2018年1月10日

心が叫びたがってるんだ

監督:長井龍雪/制作:A-1 Pictures/2015年9月公開/日本

心が叫びたがってるんだ友だちに言われて見た『 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 』がなかなか面白く、聖地巡礼までしてしまった影響からこの作品も見ることになった。友達がこの作品を見た後でもう一度聖地巡礼に行きたいと言い出したので、急きょ見たという事情もある。

僕自身は古くからアニメヲタをやっているため性急に何かしらの作品にハマることないが、友人はアニメとは無縁の人生を送っていたがためにふいに入ってきたアニメのパワーにすっかりヤラれてしまったのだろう。宗教にハマる瞬間同様に自分の人生と作品がオーバーラップするという「どハマり現象」に陥っていた。

一方の僕はこの作品に対して「ただただ暗い」という印象しか持たなかった。先々週にジブリの森美術館を訪れていたこともあって、宮崎駿イズムが改めて頭に注入されていたことも暗く感じた理由の一つだろう。過剰な演出こそがアニメの醍醐味だと思っている僕のアニメ感に対して、ノイタミナ系に見られる抑制の効いた演出が少し物足りなく感じてしまったのだ。

一応作品的には大きな物語を持っていて(それはミュージカルを成功させる、告白するなど)、それに向かっているわけだから、抑制が効いていると言っても演出にはもう少しの工夫が必要だったのだろうと思う。また、この作品を見た後に聖地巡礼に行っていて時間が前後する話も書き添えると、作品の中に秩父の様子は出てくるものの、それが演出的に印象的な場面として描かれていない。『 あの花~ 』では印象的な場面と秩父の街がリンクしていたので、その部分はちょっと残念だったかなと思う。

これはひとえに制作時間の短さに起因しているのかもしれない。この映画の制作発表が2015年3月に制作発表が行われ9月に全国公開されているのでテレビアニメに毛の生えた程度の制作期間しかなかったと想像する。また、聖地巡礼も念頭に置いた町興しアニメでもあっただけにそのあたりの街を生かした演出の少なさは抑制の効いた心の変化以上に気になった。

あとは「ただただ暗い」ということがやっぱり気になった。

埼玉のご当地映画と言えば『サイタマノラッパー』などが代表的な作品だと思うが、こちらにはユーモアがあった。『ここさけ』にはそのユーモアが薄く、ただただ真面目に苦しいという作品になっていたので、僕の友人のように人生に対して何か心にわだかまりを抱えている人には響いたかもしれないが、僕のような元アニメヲタクのただのおっさんにはやや物足りない作品になってしまったのだと思う。

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