2017年11月18日
裏のハローワーク
草下シンヤ/2008年/彩図社/文庫
マクロ漁船乗組員・治験バイト・運び屋・裏ビデオ販売店・夜逃げ屋など、噂には聞くものの実際にどうやって稼いでるのかわからない職業にスポットを当てて、当事者にインタビューをしたルポタージュ。
2004年に発行された単行本の文庫化なので若干ネタとしての鮮度はないが、なかなか面白かった。総じて言えることは、裏のハローワークで就職しても大して金は儲からないということだろうか。
この本の中で紹介されている職業の中で興味深い職業が2つあった。1つは原発作業員。もう1つは麻雀裏プロだ。
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震を経験している僕たちにとって、原発作業員は最も危険な職業の一つになっているはずだ。しかしこの本はそれ以前に書かれており、非常に安全でおいしい職業であると紹介されている。鈴木智彦氏が『 ヤクザと原発 福島第一潜入記 』でヤクザが原発に深く関わっている事実をルポしていたが、ヤクザ絡みの話は『裏のハローワーク』でも登場していた。
麻雀裏プロは僕の親戚がこの職業についていた。僕が聞いた話では組長の代打ちをしているとのことで、その話はこの本の中でも少し出てきた。ただ、インタビューに答えていた裏プロの話ではメインの稼ぎは代打ちではなくレートの高い雀荘で稼ぐというシンプルなものだった。だからこの職業に関して「裏」というのはレートの高さ(千点1000円以上)だけを意味しているようだ。
そう考えると、この本のタイトルにもなっている「裏」とは何なのか? ということについて少し疑問がわく。違法行為という事実1つをとっても、それが人を傷つけるような犯罪行為なのか、たんなる制度上の規制を超えただけのものなのかでも随分違う。詐欺師や強盗などはただの犯罪者だが、夜逃げ屋や本番OKの風俗などは社会のバッファとしては必要なものかもしれない。
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