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2017年12月27日

迷いながら、強くなる

羽生善治/2013年/三笠書房/四六

迷いながら、強くなる尊敬する偉大な棋士・羽生善治氏の言動にはいつも注目している。言葉数の多いタイプではないが、その一言一言が僕の考え方に指針を与えてくれるからだ。本書のタイトル「迷いながら、強くなる」も僕にとってはとてもひっかかる言葉で自分自身の生き方にとてもリンクしているように思えた。

結果的にはタイトル負けというかかなり薄味な内容だったが、多忙な棋士が本など書いている暇があるわけもないので仕方ないと言えば仕方ないかもしれない。タイトルをつけた編集者の勝利だね。書かれている言葉はどれも共感できるものだった。

今の時代はインターネットで簡単に情報を取ることができるため、自分の脳で本来記憶として管理しておく情報すら外部の記憶装置(インターネット)に委ねてしまっている気さえする。それは一昔前にさかんに言われていた「情報過多」という事態をも超えている。

こうした事態は将棋ととても似ているようにも思える。というのも、将棋は相手の持ち駒も含めて材料(情報)がすべてオープンになっているからだ。オープンになっているにもかかわらず駒の動きで局面がどんどん変化してしまい、それを先を読み切ることはとても難しい。

また、将棋には膨大な定跡という情報がある。この定跡を知らない相手だと定跡を知っている者が圧倒的な優位に立つが、コンピュータの力を借りればその定跡の情報は素人でも補ってしまえる。これはその昔読んだ池谷裕二氏『 単純な脳、複雑な「私」 』に書かれていた内容(そこそこ難しい問題は誰にでも解決できるが本当に難しい問題は誰にも解決できない)にも繋がる話だ。

たとえ定跡をコンピュータを使って参照したとしても最後に手を選ぶのは人間なのだ。その最後の決断の部分は誰も決めてくれない。羽生氏が本書でも書いているように無駄な情報が決断を鈍らせている可能性すらあるのが現代だ。だからこそ、この最後の部分にこそ本書のタイトル「迷いながら、強くなる」という言葉にはこめられている。

僕なりに解釈をすればリスクをとる訓練をすることで人は強くなるということなのかもしれない。そう考えれば、サラリーマンとして働く僕にはとても響く話だ。

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