bemod

2017年12月28日

弱いつながり

東浩紀/2014年/幻冬舎/四六

弱いつながり一般意思2.0 』以来のあずまん本を読了。最近はめっきり批評本を読まなくなったので、いまこの界隈がどうなっているのかまったくわからない。たまにメディアにコメンテーターとして出てくる若手の顔ぶれを見ても東浩紀さんが批評家としてバリバリ活動していた頃の顔ぶれとあまり変わらないから、そういう意味でも東浩紀さんが批評界隈に一つの時代を作っていたんだろうと思う。

そんな東氏が書いた今回の本はDiscover21から出てそうな自己啓発本めいた代物で、文章量も少なくあっさり読み終えた。書き口もやわらかくすっかりお爺ちゃん化したのかな? …と思いきや、現状認識の的確さは相変わらずだった。特にネットは見たいものしか見えないために繋がりを深くするという彼の意見は僕の実体験を通してよりリアルなものに感じられた。

例えば僕のtwitterはそのほとんどがアイドル関連のツイートに埋め尽くされている。もともとそういうつもりで始めたわけではなかったのだが、twitterを始めたころとアイドルに興味を持ちだした頃が重なってしまったために知らない間にアイドルやアイドルヲタの呟きに注目するようになり、フォロワーもそういう人が増えていった。その結果、日常生活の中でも常にアイドルに関連したコミュニティの中で流布している情報や価値観を共有するようになっていった。

こうした深化の仕方は昔もあったのかもしれないが、昔は知識が深まるだけであったように思う。今は知識の周囲にあるコミュニティに簡単にコミットできるため、多様性のあるはずの日常が蟻地獄のように一つのコミュニティの中に収斂されていってしまう。僕もそのようにしてアイドルヲタ中心の日常に埋没していったように思う。

これはある種の洗脳に近い。Amazonのおすすめ検索のように情報の誘導そのものが最適化されている為に、意図するしないにかかわらず検索を繰り返せば繰り返すほど一つの価値観に落とし込まれていくという事態だ。もしかしたら、中東で急速に力をつけているイスラム国にも同じようなことが言えるのかもしれない。

東氏はそうした状況への対策として「観光客」として在ることを推奨している。これは面白い意見だ。いまのネットの世界は簡単に一つの価値観の蟻地獄へ落とし込まれてしまうので、観光客としてある程度の距離感を持ってコミュニティを横断することによって多様性を確保しようというのがその狙いだ。

僕もこの意見には大いに賛同できる。ただ、観光客として在るためには相当なスキルが求められるような気もする。

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