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2017年12月28日

渋谷と呼ばれた男

植竹拓(ピロム)/2013年/鉄人社/四六版

渋谷と呼ばれた男渋谷のアウトロー関連の読み物が好きなので、その関連として読んでみることに。工藤明男氏の『 いびつな絆 』や『破戒の連鎖』のような暴力的な話題は少なめで、90年代後半からゼロ年代へと続く渋谷カルチャー(というか渋谷の空気感?)の一面を自伝スタイルでなぞったという感じだった。

僕が東京に出てきたのは99年頃で当時彼はカリスマモデルだった。ギャル文化に興味があったわけではないが、1999年から2005年くらいまでは渋谷は新宿などのクラブでもよく遊んでいたので、彼の活躍というのはよく目にしていた。だからギャル男文化の象徴として渋谷があるという意味においては彼はたしかに渋谷そのものを引き受けていたと言っても過言ではないだろう。

彼はその当時の様子を懐かしみつつ今はそれがなくなったと書いている。それは事実だろう。ゼロ年代に郊外に大量の大型ショッピングモールができ、その中に有名ブランドのショップが入るようになった。またネット通販も充実し、田舎(郊外)と渋谷との差がなくなってしまったからだ。

渋谷は田舎者の集まりであり、田舎者がしのぎを削ることで渋谷の街が熟成されたという側面は強いため、時代の変化が渋谷をよくあるタコツボ的な街の一つにしてしまったのだ。よくよく考えれば渋谷というのは下北沢や高円寺にあるような地元としての地域性がミックスされた街ではないために、ギャル男・チーマーといった上物の文化が後退してしまうとすぐに無機質な街になってしまう。

事実、いまの渋谷はとても無機質な街だと思う。渋谷のセンター街といっても昔のようなスペシャル感はなく、少しにぎわっている商店街という程度の位置づけにしかなっていない。そんな渋谷をかつてのような熱量を持った象徴的な街にするにはどうすればいいのだろうか? そんなことをぼんやり考えながら読んでいたものの何も思い浮かばなかった。

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