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2015年5月5日

ハンバーガーの教訓 ― 消費者の欲求を考える意味

原田泳幸/2008年/角川書店/新書

ハンバーガーの教訓 ― 消費者の欲求を考える意味かなり面白かった。

まず原田氏のプロフィールが面白い。東海大学工学部を卒業した後に10年ほどSEをした後に営業職に配置転換させられ、その後、転職を繰り返しながら最後はアップルの日本法人社長からマクドナルド日本法人のCEOにたどり着く。

30代の転職などはどこにでもあるありふれたものだし、彼自身の転職も成功ばかりではなかった。事実、彼は営業職に配置転換されたことを不服としてSEの技術職を求めて転職を繰り返している。にもかかわらず彼は30代後半から驚異の上昇軌道に乗っていく。ここの軌跡がまさに奇跡と言える。

この軌跡を運と実力が上手くかみ合った結果と言ってしまえばそれまでなのだが、彼の成功から教訓を読み取るとすれば、それは「折れない心」ということだろう。そしてもう一つは「自分で考える」ということだ。

「自分で考える」というの羽生善治の『 大局観 自分と闘って負けない心 』ともつながる話で僕には納得のいくものだ。マクドナルドのような大きな会社は最新のマーケティング理論で商売をしているのかと思いきや、それだけでは上手くいかないということを原田氏は悟っている。これはアンケート至上主義で面白いマンガが作れないと考える 長崎尚氏の意見 にも繋がっている。

いまはインターネットがあるから何でも検索して、その結果を自分のアイディアとして採用してしまうケースが少なくない。これは短時間で最も適切なアイディアが得られる方法である。しかしながら、自分専用のGoogleは存在しないので、誰もがその最適だとされるアイディアに行きついてしまう。これを僕はかつて最適解問題と呼んでいた。

一見効率的な方法のように見えるが、全員の意見が似たようなところに収斂されていき袋小路に陥っていくという現象なのだ。本当に必要なのは多様性だと思うのだが、空気を読みながらリスクを取らない振る舞いをすることを最適解とする風潮のある日本の職場では、その多様性を担保することはとても難しい。

原田氏はそうした状況を踏まえつつ、毎日必ず自分で考える時間を作っている。このことは僕も見習いたいと思う。彼は2ちゃんねるなどでめっぽう叩かれているが、コモディティ化したマクドナルドのような外食チェーン店が生き残る難しさを考えた時に、彼のチャレンジングな姿勢というのは常に学ぶところしかない。サイゼリアの社長・正垣氏も『 おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ 』の中でマクドナルドの店舗から学ぶことは多いと書いていた。

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