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2004年08月27日

戦前・戦中作品集[2]

東京国立近代美術館フィルムセンター京国立近代美術館フィルムセンターで開催されていた「日本アニメーション映画史」という上映会にまたしても参加。前回の「漫画映画の先駆者たち」に続き、今回は「戦前・戦中作品集[2]」を観賞した。良くも悪くもこのあたりの時期は激動の時代だったので惹かれる部分が多い。

『忍術 火の玉小僧 江戸の巻』 by 田中與志
(10分/35mm/白黒/1935年/日活京都漫画部)

『火の玉小僧』シリーズ今回の上映プログラムの中でも一番見たかった作品。いわゆる少年剣士を主人公にすえたドタバタ時代劇モノ。ディズニーの影響をモロに受けているのだろうか、キャラクターデザインのデフォルメが非常にアメコミチックで今のキャラクター造形にかなり近いものがある。主人公が返答に「オッケー!」と英語を使うのが興味深い。

『火の玉小僧 山賊退治』 by 田中與志
(9分/35mm/白黒/1935年/日活京都漫画部)

山と山の谷間にロープを張り、そこで火の玉小僧と山賊が戦うシーンは秀逸。場面の設定も、ストーリーの展開も非常にアイデアが凝縮されていて面白い。コミカルな動きと躍動感のある絵作りにパワーを感じた。しかしこの頃のアニメは残酷だ。首がダイコンを切るみたいにパコパコ切れて飛んでいく。

『新説カチカチ山』 by 市川崑
(6分/35mm/白黒/1936年/J.O.トーキー漫画部)

今なお現役の御大・市川崑氏の作品。でも正直あまり憶えていない(金太郎とかのらくろのパロディもあったかな)。雨の表現がショボかった。もしかするとこの頃はまだ、セルに傷をつけて雨を表現する手法は開発されていなかったのかもしれない。

『お日様と蛙』 by 宮下萬三
(10分/35mm/白黒/1936年/横浜シネマ商会)

擬人化モノ。子供向けのためか、当時のアニメにはやたらと擬人化したキャラクターを使ったアニメーションが多い。この作品は魚とカエルの戦い。

『凧さわぎ[改編版]』 by 西倉喜代治
(10分/35mm/白黒/無声/1936年/オールキネマ社)

擬人化モノだったような記憶が。作品中に「高枝切りバサミ」が登場して驚いた。通販で有名なあの道具は、こんな昔からあったのだ。

『漫画 夢の招集令』 by 不明
(9分/35mm/白黒/1938年/三幸商会)

戦争モノ。ヒトラーなのか、ヒトラーを模したチャップリンなのかはわからないが、そのような主人公が登場し、中国と戦う。先のアジアカップの日本と中国のような茶番ではなく、当時は本当に日中戦争をやっているんだから時代背景を考えると結構恐ろしい。いわゆるプロパガンダ系のアニメ作品。

『チュウ児の羽衣』 by 山口貞三
(11分/16mm/白黒/無声/1941年/土田商会)

蝶と鼠の話。こちらも擬人化モノ。

『發声漫画 海の小勇士』 by 酒井七馬
(8分/35mm/白黒/1942年/日本映画科学研究所)

波の表現に進歩の跡が見られる。1942年というと太平洋戦争真っ最中の時期。敵を殲滅することに主眼を置いたプロパガンダ映画かと思ったら、「生産性のない戦いはやめて、お互い仲良くしましょう」として終わっていた。

全体的には、うーむ。まぁまぁでした。これは時代性うんぬんというよりも、単純に面白い作品が今回のプログラムに少なかったということだと思います。1920年代から60年代にかけてのアニメの掘り起こしがなぜかブームになっているので、これからもたくさん作品が上映されると思います。それがどう時代とリンクしていたかを検証するようなところにまではまだ至っていないようですが、そういった本も時期に出るでしょう。個人的には嬉しい流れです。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 23:06

アニメ製作を開始

リアル仕事もひと段落し、アニメ製作を再開。とりあえずFLASH★BOMBに出品した作品を改良中です(音楽を変更するため)。また携帯電話のコンテンツ用のキャラクターアニメ研究もスタート(こちらはブログ内でも順次研究予定です)、『二代目(仮)』も本編製作を開始と、端っこの方でアウトローに頑張っております。

Posted by Syun Osawa at 22:24

2004年08月26日

美しく響く

Velure - Songbox僕の大好きなデンマークのネットレーベル iDEOLOGY の記念すべき第10作目。ご紹介するのは歌姫Lynnelle Moranを擁するVelureの『 Songbox 』です。

一曲目『 Walk home 』で完全にハマってしまいました。エレクトロニカ的装いもありながら、一方トリップホップ的な装いもあります。しかし主眼はあくまでうねるシンセとLynnelleの歌声。サビの落としこみ方と広がりが相当カッチョイイです。

音楽業界の景気の落ち込みに反して、フリーミュージックの世界は広がり続けています。良いか悪いかはわかりません。僕の好きな音楽の多くが無料で手に入ります。それがいいかどうかもわかりません。

Posted by Syun Osawa at 20:39

2004年08月24日

新版 ロシア文学案内

新版 ロシア文学案内『新版 ロシア文学案内』を読了。先日、ロシア語の先生と1時間ばかり話す機会があり、ドシロウトの僕向けの本として薦めて頂いた本。ロシアの文学者と言えば、プーシキン、トルストイ、チェーホフなどが有名だが、「そんなもんじゃないぞ!」ということを丁寧に教えてくれる作品だった。

ロシア文学研究について、ロシア語の先生は文芸評論家の中でも世代によって捉え方が随分と違うと言っていた。70歳前後の研究者と先生の世代(50歳前後)では、例えばゴーリキーの捉え方一つとっても認識が異なる。ソ連崩壊後に明らかになった事実などがたくさんあるためだ。僕はロシア文学なんてぜんぜん知らないので、ただ聞いていただけだったが、『新版 ロシア文学案内』を読みたいと思わせるほどに魅力的な話であったことは確かだ。そして、同書はそんな今のロシア文学の入門書として位置づけられているらしい。

その日の帰り図書館で『20世紀の記録〜ロシア革命とベルサイユ体制』を借りた。第一次大戦の様子が映像として残っている貴重な映像だ。ちなみに宮崎駿は『雑想ノート』でこの時代の戦車や潜水艇などの漫画を描き続けている。僕ももっと勉強をしないといかんなぁ。

Posted by Syun Osawa at 22:34

2004年08月23日

須藤健斗「KENTOWN」展

KENTOWN若干12歳のCGアーティスト須藤健斗くんの展示会が水道橋のギャラリー「トーキョーワンダーサイト」で開催されていた。『たけしの誰でもピカソ』で話題になったらしいが僕はまったく知らなかった。とにかくプロフィールが素晴らしい。9歳から作品を発表し始めて12歳で個展ですから。これはさぞかし素晴らしいのだろうと思って楽しみにしていたら、これがビックリするくらい「シンプソンズ」だった。

いや、凄いですよ。絵も上手いし、いろいろなコンテストでも入賞をしているわけですから。僕も僻んでばっかりではダメだと思い、彼の作ったアニメーションに注目してみた。作成ソフトはFLASHだ。ケント&シローのドタバタ物『洗濯日和』は典型的なアメコミ風ストーリー、行って来いの物語。キャラクターも印象的でオチも効いており、なかなかよくできている。よくできてはいるが、毎日 (・∀・)イイ・アクセス をチェックしている人には、それほど新鮮なアニメではないだろう。もっとも、こういうのを見たことがないオッサン達には新鮮に感じるのかもしれないが。

また、オリンピックイヤーということもあってか、『めちゃくちゃオリンピック』というアニメーションも公開されていた。こちらは製作途中での公開らしい。これが良かった。特にシーンとシーンの合間に挿入している五輪のアニメーションにはセンスを感じる。しかしまぁ、基本はドタバタのアメコミだ。いつか見た風のアメコミ風ギャグ漫画の域を出ているとは思えない。僕には彼の作品のどの点に新しさを感じて、どの部分が評価されたのかわからなかった。色合いだろうか? ギャグのセンスだろうか? 優れた芸術感覚を持った方々にはわかる世界なのかもしれない。僕はただのオタクだからそういうのはやっぱりわからない。

Posted by Syun Osawa at 23:40

スパイウェアに注意

エロサイトばかり見ていたためか、数日前からパソコンを起動すると同時に TrafficZap Exchange などのホームページが立ち上がる症状が出た。恐らくスパイウェアだろうと思い Hijack This でログを覗いてみると「KeyHook.exe」なるものが立ち上がっていた。Googleで調べても要領を得ず、不安ではあったが直感で削除。症状は消えた。あくまでも参考ですのであしからず。

Posted by Syun Osawa at 23:21

ティーンエイジと音楽

ティーンエイジと音楽韓国と日本の音楽を通して交流することを目的に開催された「ティーンエイジと音楽〜アジア市民を目指す!〜」を観覧。川崎市と川崎市教育委員会が後援しているということもあってか、主催者の力量のなさばかりが目に付いたイベントでした。

まず「ティーンエイジ」と言いながら、客の平均年齢は軽く40歳を超えている。そして無料にもかかわらず客の入りは4割程度。ミュージシャンが歌う前に司会の女性が「それでは歌っていただきましょう、どうぞ!」とか言うし…トーキョーワンダーウォールとのセンスの差をちょっと感じてしまったなぁ。とりあえず、ああいう場を大学教授に仕切らせちゃダメでしょ。

JoAnne出演したミュージシャンはアルガレイ、ジェジン、ジョアン、KP。僕の目当てはもちろんジョアン(知らない方は このライブビデオ を参照のこと)。ジョアン目当てのオタがたくさん来るかと思ったら、ほとんどいなかった。それにしてもジョアンは歌が上手い、アメリカで育ったということもあってか英語詞のニュアンスがかなりいいです。そして可愛い。背は低いけど何しろ可愛いです。歌の合間には日本語でMCをやっていたし、とにかく愛嬌があって明るく、なおかつキャラもある。まだ15歳、タイミングさえ合えばBOAのように日本でもブレイクするかもしれません。

雑感としては、「韓国のタッキー」と言われている(ホントか?)ジェジンはそのままインシンクやバック・ストリート・ボーイズだし、ジョアンはブリトニー(曲は初期のマドンナって感じですけど)をトレースしたかのような“そのまま”感。日本では、平尾昌晃の『ダイアナ』的トレースは、はっぴいえんどの登場で歌謡曲として日本的加工を施されるようになったわけですが、韓国のPOPはもうそのまんま。良いか悪いかとなるとそれは僕にはわかりませんけど、あの曲群を「K-POP」とは言えない感じがするなぁ。もちろん今回数曲聴いただけの印象ですけれど。

FLASHアニメ的な話をすると、「冬ソナ」の挿入も歌ったアルガレイの ホームページ には、青池良輔氏によるFLASHアニメが置いてあります。

Posted by Syun Osawa at 01:48

2004年08月21日

トーキョーワンダーウォール 2004

Tokyo Wonder Wall 2004トーキョーワンダーウォールは、東京都庁の壁面を若手美術作家の作品発表の場とし、都庁から全世界に向けて文化的魅力を発進しようと2000年から開催されているそうな。何となくうさんくさい殺し文句が踊っておりますが、よーするに石原都知事が「日本のモンパルナスに」とぶち上げたとの文化事業です。会場となった東京現代美術館は天井も高く床面積も広い。あーいう環境のいいところで、こういうことができるんだから。やるね。

今回開催されていたのは「トーキョーワンダーウォール 2004」と「トーキョーワンダーウォールの作家たち展 2000〜2003」の二つ。雑感としてはただただ「今」っぽい。金賞をとった作品なんか、今日的情報集積ロボとしての人間がモロです。僕が小学生の頃、輪郭線を描いた僕の絵に、先生が「漫画っぽいからダメ」というわけのわからない理由で×をつけました。そういう思い出を通してみると、ファシストと揶揄される石原の方が、少なくとも芸術の観点から見れば今の若者の感性に近いのかもしれません。

Posted by Syun Osawa at 11:14

2004年08月19日

パルムの樹

パルムの樹世の中の動向などとは一切関係なく、淡々とアニメ映画を見続ける生業。なかむらたかし監督作品『パルムの樹』を観賞。いやぁ〜この映画、なかなか難解だ。

なかむらたかし氏といえば、『AKIRA』の作画監督として有名な人。オムニバスアニメ作品『ロボット・カーニバル』の中で非常にミニマルな作品を公開していただけに、シュールな展開になるであろう事は何となく読めてはいた。しかしまぁ、関西弁で言うところの「わやくちゃ」な感じが最後まで作品全体を覆っていた気がするなぁ。

この絵は止め絵だとなかなかその良さが伝わり難いが、動いている動画としての『パルムの樹』はかなり素敵だ。液体やら破片やらそういった類の小物を含め、俯瞰した絵から見た小さなキャラがよく動く、そして、よく血が出る。ドバドバッと。「壊れもの」としてのキャラクターを血が出ることをもってリアルに表現しているところになかむら氏の意欲を見ることができる。さらに、人間ではないパルムが人間に近づくにつれてどんどん嫌なヤツになっていく姿は、目の前にある小さな物語を超えて僕の心に訴えかけるものがあった。

わやくちゃだったのは、対立軸(を中心とした設定)について。植物と人間なのか、子どもと大人なのか、地下と地上なのか。頭の弱い筆者にはだんだん何が何だかわからなくなってしまった。物語の後半、パルムの目的がぶれ、ヒロインの女の子のために人間になりたいという非常に人間的な感情が物語を支配するにもかかわらず、最後の最後にはヒロインの女性が自分ではない人間の男性と子どもを作り育てていくことを見守って行きたいと独白するという人間的でない終わり方については、僕にはどういう意図があったのかよくわからなかった。

Posted by Syun Osawa at 23:12

2004年08月17日

ロシアのユーモア

ロシアのユーモア川崎浹著『ロシアのユーモア ― 政治と生活を笑った三〇〇年 ―』(講談社選書メチエ)を拝読。ロシアではちょっとした政治的ジョークのことを「アネクドート」というらしい。そのアネクドートの歴史を追った一作。小林よしのりがかつて日本人について自虐史観なんて言葉を使ったことがあるが、この本の中に登場するロシア人はまさにその言葉にピッタリだ。いくつかを紹介する。

 スターリンはプーシキン記念碑の複数の計画案を検討していた。第一案は、プーシキンがバイロンを読んでいる、というものだった。
「これは歴史的には正しいが、しかし政治的には正しくない。党の総路線が示されていないのではないか?」
 第二案は、プーシキンがスターリンを読んでいる、というものだった。
「これは政治的には正しい、しかし歴史的には正しくない。プーシキンの時代には、わたし、同士スターリンはまだ本を書いていなかった」
 第三案が政治的にも歴史的のも正しいことが判明した。それはスターリンがプーシキンを読んでいる記念碑である。こうして記念碑が建てられ、開幕式で、みなが眺めると、スターリンがスターリンを読んでいた。

こんなのもある。

 あの世でキリストとマルクスが出会った。科学的共産主義の創設者はキリストにこう尋ねた。
「わたしの科学的な教義は一世紀半で霧散してしまったが、あなたの科学的な教義はなぜ二〇〇〇年近くも続いているのですか?」
「あなたの基本的な過ちは、自分の天国を示してしまったことにあるのです」

最後に、万国の労働者に団結を呼びかけたマルクスが復活し、第23回ソ連共産党大会(1966年)で演説を行うというアネクドートから。

 マルクスの新スローガン。
「万国の労働者諸君、私を許してください。」

うーむ。自虐的。

Posted by Syun Osawa at 23:01

2004年08月15日

ダロス

ダロス日本初のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーションの略、ビデオ販売を目的に作られたアニメのこと)である押井守監督作品『ダロス』を観賞。押井守のファンサイト 野良犬の塒 によると、押井は全4話のうち、第2話と第3話の脚本・絵コンテ・演出、そして第4話のアクションシーンと絵コンテを担当したそうだ。

率直な感想として、僕はこの頃の押井が好きだ。言わんとしていることが素直に表現されており、恐らく自分の中でも消化できていないであろう心の葛藤が台詞にもよく反映されている。ちなみに物語の基本構造は「権力と反権力」の二項対立で押井が長年扱い続けているテーマだ。犬がよく登場するのも押井作品っぽい。

僕がこの映画に対して、押井が素直だと思ったところは、権力者と革命家の間に主人公を配置し、どちらの立場にも理解を示しながら、しかしどちらか片側の勢力を選ぶという行為を拒み続ける姿勢だ。また、革命家のオルグ活動(労働運動や大衆運動の組織活動)によって労働者がゼネスト(ゼネラルストライキの略、労働者の全国的規模によるストライキのこと)を起こし、一瞬は革命家に同調して反乱のような状態になるも、結局はそれを放棄し自分達の生活に戻っていくというシーンは非常に冷静な視点だと思った。さらに、労働者に「俺たちの世代はお前たち(ここでは子どもの世代)とは違う。権力者に対して疑いの目を持つことはできない」というような台詞も独白させていた。うーむ。

「ダロス」というのは、開拓者(労働者)たちの神である。人間が人工的に作り出した神という設定などはオウム後の僕たちから見ればかなり強引に映る気がしないでもないが、同時期に公開された「幻魔大戦」や「風の谷のナウシカ」などに鑑みると、当時の雰囲気をよく表していると思う。

Posted by Syun Osawa at 23:43

高畑勲×大塚康生 座談会

日本漫画映画の全貌東京都現代美術館で行われていた企画展「日本漫画映画の全貌」を記念して行われた高畑勲氏と大塚康生氏の座談会に参加した。お盆ということもあり子供連れとカップルだらけ。ジブリは強いなぁ。

座談会の方はかなりしょっぱい内容だった。なにせ客がミスマッチ。高畑勲の名前に釣られてやってきた親子連れやカップルを前に、「わんぱく王子の大蛇退治」や「太陽の王子 ホルスの大冒険」の裏話とか、労働組合の話とかね。さらには司会の編集者が上手に進行できない。編集者がステロタイプに「ディズニーからジャパニメーションへ」的な話を振っていくも、高畑勲氏は「漫画っぽい絵とかリアルな絵とかいうのは、内容に対してどうかという問題。東映だからどちらかといえば時代劇からの影響では。」とアッサリいなしていた。また、「なぜ『安寿と厨子王丸』のような変化球を?」との問いにも「変化球ばかりでしょ。『白蛇伝』とかも。『白雪姫』から始めるのとは違う。」とズバリ。

とはいえ御大二人の座談会である。有意義な話もたくさん出た。例えば、作画監督というポジションを作り、画面の絵の統一を図ったとか、ビデオを使用した動画テストをするようになったとか(ここではディズニーから影響を受けた話もしていた…)、昔を知る人にしか出来ない思い出話の数々。人生の深みってヤツを感じます。

興味深かったのは、アニメーターと作画監督、演出の立場についての話。今でこそ、作画監督や演出にかなり大きな権限が与えられているが、当時は逆だった。「演出はいなくてもいいが、作画はいないといけない」と、現場からアイデアが出てきて、それを採用するケースが少なからずあった。労働組合が花盛りだったこともあり(当時、東映労組の委員長は大塚康生氏がつとめていた)、そういう流れはある意味で民主主義的かもしれないけれど、それが緊密なドラマを組み上げていくときには障壁となることもあり、演出として違和感があったと高畑氏は語っていた。

妄想的極論をすると、演出が独裁的な力をつけていく過程で作画をしない押井守が生まれ、さらにその権限が編集者やオモチャメーカーのプランナーなどに移行してポケモンが生まれる。そしてその流れが現場無視となり、アニメーターの質を下げ、アニメの空洞化を招いたとも捉えることができる。さらに極論すると、そうしたメディアミックスのカウンターとして「ほしのこえ」が生まれたとすると…極論というか…ま、相当ハズしている気がするのでこの辺で…。

Flip Book vol.1高畑氏の言葉の中で印象的だったのが、「ディズニーは今でもアニメーター至上主義、演出家の名前なんて誰も覚えてないだろ?」。大塚氏の言葉で印象的だったのは、会場から出た「今の若いアニメーターに求めるものは何ですか?」の質問に対しての「とにかく勉強しなさい」。ダンボールいっぱい絵を描けば、最初と最後の絵を見比べたときにあきらかに上手くなっているという指摘は、非常に重みがある。

先週の話になるが、大塚氏のホームページで通信販売していた『Flip Book vol.1』を購入していた。いわゆるパラパラ漫画というヤツで、本を手で押さえながらパラパラやると中に描かれた猫が動き出すという代物。3D技術だけでは絶対に到達できない「生々しさ」を見ることができる。宮崎駿氏が昔テレビの番組で「動け、動け」と言いながら作画をしていた様子を思い出した。どこかで見る機会があれば、一度見られることをオススメしたい。

帰りに大塚氏が監修した『日本漫画映画の全貌』という本を購入して帰宅。こちらの本も『Flip Book』同様にISBNがついていないため、書店では購入できない。『日本漫画映画の全貌』の方は2500円と少々高めだが、戦前から戦後のアニメの流れをアニメーターの目線で追っており、また使用されている写真もセル画ではなくイメージボードや作画用紙の画像を使用しているため、なかなか面白い資料集になっていると思う。見かけたら要チェックです。

Posted by Syun Osawa at 00:29

2004年08月13日

エイベックス・ドリ〜ム 2

前回の続き

エイベックスは誰が作った会社なのか?

浜崎あゆみは松浦氏が辞表を提出したことを受け、「松浦専務の辞任はエイベックスの終焉」であるとコメントした。なぜか? もしも松浦氏がレンタルCD屋をやっていなければ、エイベックスという会社は生まれていなかったからである。

『エイ・ドリーム』によると、松浦氏は大学4年生のとき、当時アルバイトをしていたレンタルレコード店のオーナーの勧めと父親の援助により、横浜郊外に自分の店をオープンさせている。水草氏の文章からは読み取れなかったが、おそらく全国チェーンのレンタルレコード店のフランチャイズとして、自前の店をオープンさせたということだろう。

松浦氏はレコードからCDに移行していく時代背景を尻目に、自分の店にアナログ12インチのユーロビートを並べた。そして、それが徐々にクチコミで広がり、話題になる。一方その頃、八王子で同じくレンタルレコード店を経営していた男がいた。鈴木壱成氏である。鈴木氏は松浦氏の店を訪れたとき、彼がユーロビートのレンタルで成功していることに心を引かれる。鈴木氏は松浦氏に熱烈なラブコールを送り、その結果、彼らは町田でユーロビートのアナログレコードを全国のレンタルレコード店に卸す事業を始めることになった。これが「エイベックス・ディー・ディー株式会社」(エイベックスの前身)である。

鈴木氏はエイベックスの創設者であり、初代の代表取締役社長である。しかし1994年1月、突如退任し、それまでご意見番としてエイベックスを後から支えてきた依田氏が会長兼社長に就任した。今回の騒動では、アクシヴの千葉氏に対して依田氏を中心とする役員たちが解任動議を出したわけが、それより前にも何となく似通った事件があったわけだ。ちなみにエイベックスと言えば経営の依田、製作の松浦というイメージが強いが、エイベックス設立当時、依田氏は非常勤のご意見番的立場にあったらしい。

松下やホンダの創設者は今もってなお尊敬される存在であるのに、松浦氏を引っ張り出してエイベックスを立ち上げた鈴木氏の存在は今や過去のものとなっている。現代の何というか…切ない部分だ。たしかに依田氏がエイベックスを飛躍的に大きくしたことは間違いない。水草氏も彼の英語による交渉術がなければ、海外のレーベルとの契約はここまで上手く運ばなかったと記している。

ネットなどでは依田氏が社長を退いたことで、松浦氏が社長になるのでは? という憶測が飛び交っており、また彼が社長になったら経営は無茶苦茶になるとも言われているようだ。しかし『エイ・ドリーム』によると、松浦氏が経営していたレンタルレコード店の売り上げは、全国のグループ店の中でNO.1だったそうだ。東証一部の会社と場末のレンタルレコード屋を比べるのは変だけど、大学生のときに自分の店をオープンさせ、売り上げNO.1を誇った松浦氏にだって人並み以上の経営の才能はある。そしてその才能が、大会社となった今でも十分に発揮される可能性がないわけでもない。もちろんそれは、彼が同書に書かれているような「町田スピリット」なるドリームを今も心に燃やし続けていればの話だが。

つづく

Posted by Syun Osawa at 23:12

2004年08月10日

エイベックス・ドリ〜ム 1

a_dream千葉氏(株式会社アクシヴ)の解任動議に端を発した「エイベックス危機」は浜崎あゆみのキツイひと言で収束した。ミーハーな僕も各新聞社のネット報道や掲示板などを漁ってみたが、イマイチ判然としない。基本的に CCCD とかはどーでもよくて、社長職から退いた依田氏がかつて『平成日本のよふけ』(フジテレビ)で語っていたような「ドリ〜ム」なエイベックスの歴史がむしょーに知りたくなった。

というわけで、水草岳司著『エイ・ドリーム』(新風舎)を読んだ。水草氏はエイベックスが草創期だった1990年に12番目の社員として入社し、1999年に退社した方。同書はエイベックスの暴露本ということで、ZAKZAKなどでも取り上げられていたようだが、僕が読んだ限りでは誠実で冷静にエイベックスの変遷を記した本だと思った。

僕はエイベックスの成り上がり方が好きだ。それはこの本を読むことで、その思いは一層深くなった。たとえばこんな一文がある。

エイベックスは90年からこのミデム(カンヌで開催されるコンベンション)に参加し、そこで世界の音楽シーンの現状に触れると同時に、さまざまなビジネス・チャンスをものにしてきた。(中略)その中でも最大の収穫は、91年のミデムで「テクノ」と出会ったことだ。

エイベックスは91年に「テクノ」と出会ったのだ。テクノファンの人は「はぁ?」と思うかもしれない。しかし、この一文にこそ、エイベックスの重要なパワーの源が詰まっている気がしてならない。たとえば、初期のエイベックスはいわゆる「ユーロビート」を前面に押し出した会社であった。しかし彼らがユーロビートを売り出そうとした80年代後半、巷ではユーロビートはすでに過去のものとなっていたはずだ。新興勢力の後出しジャンケンが何故ここまで成功したのだろう?

つづく

Posted by Syun Osawa at 22:06

2004年08月09日

飛躍する僕らのアニメ

座談会「テレコム創成期とルパン三世」

『ルパン三世 カリオストロの城』の原画マンが飲み屋に集まって、当時の話を語っております。羨ましくもあり、羨ましくもあり、そして羨ましいです。読めば読むほど「羨ましい」という感情しか出てきませんので、これくらいに。面白いのはこの頃から宮崎駿の独裁っぷりはいかんなく発揮されていたということ。そのくらいのバイタリティじゃないとあの域にはいかないのかもしれませんね。

昔を懐かしむのもいいですが、アニメーションは今まさに飛躍の真っ只中。世界各国で素晴らしい作品がドドッと公開されております。

『泰達時代 TEDATIMES』 by 白墨

キャラクターがいい。テーマがいい。音楽がいい。そして何よりよく動く。カメラのアングルなど、日本のアニメやアメリカの映画などをよく勉強しているなぁと思わせる。キャラ回しの技術がお気に入り。今回紹介しているアニメ群の中では、一番好きな作品。

『雨と少女と私の手紙』 by 帝国少年

「ほしのこえ」が早くも文化となり、そのフォークロア(民間伝承)を生んでいると感心。というか、その時代のスピードの速さに驚いた。作品の内容についてはひとそれぞれあるでしょうが、背景はデザインを含めて相当に素敵なセンスをしていらっしゃる。個人的には普遍化してしまった「あずまんが」なデフォルメは苦手だけれど、とにかく時計や教室、電車など一つ一つのパーツデザインもカッコイイ。うーむ。このレベルの作品がもっとたくさん出てくれば、インディーズアニメも音楽業界のようにメジャーを食い始めるかもしれないなぁ。

『雲のむこう、約束の場所 予告編』 by 新海誠

もはや御大となってしまった時代の寵児、新海誠氏の新作予告編。アクセス数が多すぎてなかなか落ちてきません。この人もいずれは個人プロダクションを立ち上げて、「新海組」なんかができて、最終的にはアニメスタジオとして歩みを進めていくのかもしれません。プロダクション化は税金対策などの問題で既になされているかもしれませんね。もちろん作品は観に行く予定ですが、この人の場合は自主製作アニメビジネスの観点からもその動向を注目したいと思います。

『電脳怪獣タカサゴン 予告編』 by 石川プロ

石川プロの SF 作品。こういう怪獣モノのテイストは、ビジュアル的なクオリティも含めて70年代からずっと変わってない気がするのは僕だけだろうか。

『Latrix Reloaded v2.0』

サウスパークの 3D 化とマトリックスのパロディの両方を同時進行的に作品化。ネタは古いけど、完成度が高いので最後まで楽しんで見ることができる。パロディ強し。

Posted by Syun Osawa at 22:30

2004年08月08日

漫画映画の先駆者たち

mangaeiga東京国立近代美術館フィルムセンターで開催されていた「日本アニメーション映画史」という上映会に参加した。僕が観たのは「漫画映画の先駆者たち」の回。文字通り、日本産アニメの黎明期の作品群だ。いずれも1920年代に製作されたもので、太平洋戦争の前のアニメ作品である。

初期のアニメといわれると、僕などはすぐに日本初のTVアニメ「鉄腕アトム」や「狼少年ケン」、今や伝説となった長編アニメ映画「白蛇伝」などを思い浮かべる。もしくは、自主製作系アニメであれば久里洋二、柳原良平、真鍋博(アニメーション3人の会)など。いずれも1950年の後半から60年代にかけての作品で、今回見たアニメはこれらの作品よりもさらに30〜40年前の作品ということになる。

僕にとっては何といっても戦前というところに心引かれる。そのあたりのことは後半に触れるとして、各作品の雑感をチラチラと。

『蟹満寺縁起』 by 奥田秀彦&木村白山&内田吐夢
(11分/35mm/白黒/無声/1924年/朝日キネマ合名社)
蟹を助け、最後にその蟹に助けてもらうという典型的な昔話。秒間何フレームで動いているのだろう。そればかり気になった。横向きのシーンが多く、切り絵のコマ撮り(FALSH のモーショントゥイーンを思い浮かべればわかりやすい)が中心。しかし、枚数を重ねてちゃんとアニメーションしている部分もあった。キャラクターだけをフェードアウトさせて消す技法が使われていたのは新鮮だった。

『勤倹貯蓄 塩原多助』 by 木村白山
(10分/35mm/白黒/トーキー版/1925年/朝日キネマ合名社)
声あり。こちらもいわゆる昔の時代劇。それなりに動いてはいたのだろうけど、ほとんど記憶がない。

『ノンキなトウサン竜宮参り』 by 木村白山
(10分/35mm/白黒/無声/1925年/鈴木映画)
働かない父さんが竜宮上に行って、戻ってきておじいちゃんになるという浦島太郎のパロディ。最後には竜宮城から請求書が。ブラックなユーモアが効いていて今見ても笑える良作。動画部分をとってみても他作品と比べて群を抜いてよく動く。バストアップではなく、全身のキャラクターをちゃんと歩かせ、ちゃんと走らせていた。浜辺の背景を実写に頼っていたのは印象的。会話部分は無声映画のそれ(動画とコメントを別々に表示させる方法)ではなく、漫画と同じふき出し形式。布山タルト氏が「SFの助」でやったときは新鮮に感じたが、80年前から存在した技法のようだ。

『映画演説 政治の倫理化』 by 幸内純一
(32分/35mm/白黒/無声/1926年/スミカズ映画創作社)
プロパガンダ映画。タイトルにもあるとおり演説というだけあって、文字がベースで見ていて結構飽きる。ただ演説内容は当時の時代性を反映して面白かった。よーするに「今の年寄り(政治家)は金と権力に生きているからダメだ。青年よ、国に危機が迫っている。目覚めよ!」というような内容。226事件が起こったのも納得できる。学校の先生から教えられたことだけでは、当時の時代の空気を読み取るのは難しいと改めて実感した。技術的な部分では、アニメのキャラクターが実写に移り変わるというトレースを利用した手法が用いられており、こういう斬新な技術を日本が独自に生み出していたとすれば、これはかなり凄いと思う。

『漫畫 魚の國』 by 木村白山
(15分/35mm/白黒/無声/1928年/文部省)
文部省製作というのが凄い。早い話がプロパガンダ映画。小さな魚たち(日本)が黒いクジラの軍団(外国)に襲われ、最期は魚たちが団結してクジラ軍団を倒すという話。内容はどーでもいいのだけれど、魚のキャラクター設定が不思議で、なぜか魚の頭に人間の体といういでたち。上官がタコというのもよくわからない。

『お江戸の春』 by 正木(柾木)統三&玉の浦人
(6分/35mm/染色/無声/不完全/1928年/東亜キネマ)
切り絵。絵はかなりPOPで、今のアート系などの作品の中にもかなりパクってるのがあるんとちゃうか? と思うくらい完成度の高いまとまった漫画絵。古いけど。

『四十人の盗賊(朱金昭)』 by 鈴木俊夫
(17分/35mm/白黒/トーキー版/1928年/銀映社)
影絵。声あり。アリババと40人の盗賊。子供向け映画なのだろうか。内容は結構エグい。小学校の頃、影絵の劇を何度か見に行ったことを思い出した。

1920年代のアニメが予想以上に面白く驚いた。現在、国がアニメに予算をつけて、国家の枠組みにアニメを組み込もうとしている。大塚英志なんかはそれを嘆いているが、よくかんがえると黎明期にも国が予算を出してアニメを作っていた例がたくさんあったわけだ(そーいう意味では大塚の言ってるアニメのサブカル的捉え方だって、うーむ…)。ま、そんな多くはプロパガンダ映画なのだけれど、そういう歴史から学ぶなら、いつかはプロダクションI.Gやスタジオジブリが「世界の子供達を助けるために、みんなで自衛隊に入ろう!」的なアニメを作るかもしれんなぁ、としみじみと思うのでした。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 22:04

2004年08月07日

「動くの?コマ」展

ugokuno?驚いた。いやー、驚きました。キャラも動きも最高です。

京橋ASKという小さなギャラリーで開催されていた布山タルト氏の「動くの?コマ」展はなかなか刺激的な体験でした。ギャラリーで上映されていたのは平成15年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞作品「FRANK」と「SFの助」の2作品。「FRANK」はシアトル在住の漫画家ジム・ウードリング氏のコミックから、「SFの助」は「猿飛佐助」で知られる故・杉浦茂氏の漫画をアニメ化したものです。どちらも2003年の作品らしいのですが僕は初めてその存在を知りました。

ネタのチョイスからもわかるとおり、アニメといっても方向からしてアート系。僕には近寄りがたい部分もある。でも、そこにどんな思想があろうとも技術の流れは萌え萌えどころと基本的には同じ。セルシェードの3Dアニメなわけです。特に目を引いたのは3Dの使い方。コミック作品が3Dで動くということを忠実に再現しており、例えば背景などは2Dのグラフィックを数枚重ねて3D的に動かすなど、細かな配慮がなされていました。また中盤に大蛇のような生き物が登場するのですが、テクスチャマッピングが美しく技術力の高さにも感心しました。

「SFの助」も漫画のコマをアニメ的に捕らえようという試み。「FRANK」とは違ったやり方で、2Dを2Dらしく捉えて動かしています。

コミックをアニメーション化するという試みは、商業アニメの世界ではずーっと前からやりつくされているわけなんですけど(当たり前かw)、これを村上隆みたいに現代美術方面に置き換えると何となく目新しく感じてしまう。たしかにデザインとか細部までカッコいいんですよね。で、見ると「うわっカッコイイ!」って思うのですが、ちょっとすると「これって、でも…」と思うに至ってしまう。

今年のDoGAコンテストの選考結果が散漫だったことでもわかるとおり、「ほしのこえ」で萌えベースのアニメが個人製作の世界にドドッと参入してきたことにより、それまでジャパニメーション系とアート系で何となく住み分けがされていたはずの「アニメ」の捉え方が、今何となく揺らいでいる感じがします。そんな風に思うのはたんに僕が修行が足りないだけかもしれません。精進します。

Posted by Syun Osawa at 20:50

2004年08月05日

アニメとロック

rewrite.gifアジアン・カンフー・ジェネレーションの新曲『リライト』が、アニメ『鋼の錬金術師』の OP 曲になっていた。アジカンといえば『未来の破片』がテレビ東京系列の人気アニメ『NARUTO』のオープニングで話題になり、エルビス系有象無象の中から頭一つ抜け出たバンドである。超キャッチなメロディラインで、ポッカリ空いていたトライセラトップス的ポジションを見事に埋めてみせた(和製 WEEZER といわれているらしい)。ブレイク当時、アニメと同時進行で深夜の音楽番組が彼らのフジロックへの初参加の模様をドキュメントで追ったりして、実売でアニメ、ポジショニングとしてのロックなのだと僕は捉えていた。

もちろんそんな話は作り話である。飛躍しすぎだなと思っていた。そうこうしているうちに『リライト』がまたもやアニメの主題歌になった。『NARUTO』から『鋼の錬金術師』、どちらも人気のアニメ番組だ。これはさすがに出来すぎだと思い SONY のホームページをたどってみたところ MUSIC meets ANIMATION なるページでアジカンが扱われていた。B-ing 系列から始まった(といわれている)アニメに関係ないアニメの OP 曲群。その流れが逆転現象を起こして(つまりレコード会社の方がおもねる形で)現状がある。これでジャケットの絵が近藤聡乃だったらどうしようと思っていたが、さすがにそれは思い過ごしだった。

文学的ロックなんていう言葉がよくいわれる。日本においては文学もロックも死んだかどうかの安否状況が語られる中で、その二つをあわせたから何なんだと冷めた僕は思ってしまうけれど、そういうキャッチコピーはあくまで「カッコつけ」であって、みんな意外に着実にビジネスしてんだなと貧乏人の僕はしみじみ思うのでした。ヒガミ根性というヤツです。

Posted by Syun Osawa at 23:55

2004年08月04日

人生って素晴らしい

哲理人生:現代愛情故事 by 豆腐果

いわゆる小小系(棒人間)の FLASH アニメ。音楽も好き、雰囲気も好き。シンプルだけど見ていて気持ちがいい。こういう「陽」のエネルギーは今の僕には重要です。

Team America by The Creators of SOUTH PARK

ネタなのか本当なのか、主なキャストはこんな感じ。アレック・ボールドウィン、ショーン・ペン、ジョージ・クルーニー、ティム・ロビンス、リブ・タイラー、スーザン・サランドン、マーティン・シーン、マイケル・ムーア、ジョージ・ブッシュ、キム・ジョンイル。人形ですけど。にしても「世界の警察 チーム・アメリカ」ですよ。これができるからアメリカって国は侮れないわけです。

Posted by Syun Osawa at 20:55

2004年08月03日

エイベックスと愛すべき B 盤

今回のゴタゴタも漫画のような話だった。騒動はふるーつぽんちの近野成美も所属しているアクシヴの社長、千葉龍平氏が役員会で解任動議を出されたことに端を発している。それに怒った松浦氏が追随という流れだが、ではこの千葉氏とは何ものなのか? 以前、BEMOD でも一度だけ彼について触れた事 がある。

Musicnan-NET のインタビューに感銘を受けたためだ。彼は高校中退後,定時制の高校を 23 歳で卒業。その後小さな印刷会社の職人を経て、小室哲哉との出会いをきっかけに社長へと登りつめていく。松浦氏のサクセスストーリーはよく知られているところだが、エイベックス自体がこういう上昇志向のアウトローによって支えられてきた部分に感慨がある。

エイベックスの作品で記憶に残っているものというと初期の Prodigy くらいしかない。しかし、例えば山下達郎はエイベックスについて以前こう語っていた。

「80年代までは変なレコードがよく出ていた。たとえばテイチクなんかから。今でいうとエイベックスなんかがそうじゃないかな。10年後、20年後に聴いたときに『何だコレは?』と思うものが出てくるかもしれない。」

エイベックスは名曲を残さないかもしれない。しかし、間違いなく語るべき B 盤は残すことだろう。なぜならそこにはエリートにはなし得ない愛すべきいい加減さがあるからだ。例えば今回の解任動議でも、松浦氏の辞任、所属アーティストからのコメント、松浦、千葉両氏の復帰。ネットで「エイベックスは心配ありません」のコメント。

このスピード感が愛らしい。「今の無し!無し!なかったことにして☆」的な子どもじみたところが僕は大好きです。

Posted by Syun Osawa at 22:49

逆境イレブン

アジアカップ準々決勝。ヨルダンとの PK 戦で中村と三都主が続けて外した後のキーパー川口。「これが逆境!」
アジアカップ準決勝。1点を先制された日本は、追い討ちをかけるように遠藤が退場。「これが逆境!」
島本和彦の「逆境ナイン」をリアルタイムで見ている気分だ。

Posted by Syun Osawa at 22:17

2004年08月02日

FLASHの表示が…

よくある話。スタイルシートと FLASH による表示が、ブラウザを変更しただけでおかしくなる。これは困った。Opera で見てみると右上の FLASH は以下のように見える。

opera.gif

400×240で指定しているはずなのに、縮小されたように表示されてしまう。これは Opera の仕様に違いないと思い Mozilla で確認してみると…

mozilla.gif

もっと酷いことになっている。いやはや InternetExplorer 恐るべし。とりあえず表示されてるからいいっちゃいいんだけど、たぶん Mac 関係ではさらに悪い状況になっていることだろう。そんなわけで HTML エディタを TTTEditor から ezHTML に変更して心機一転。FLASH でアニメを作るのは楽しいが、その枠組みを作るのはとてつもなく面倒臭い。はぁ。

後日談

とある親切な方に教えていただきました。Flash の表示幅がブラウザを変えるとおかしくなるというのはタグの設定があいまいだったために起こったようです。InternetExplorer で FLASH 枠を決定するタグは <OBJECT>で、Netscape などで枠を決定するのは <EMBED>らしいのです。ただそれだけだったようです。上記のブログの内容は即刻お忘れください。

Posted by Syun Osawa at 23:14

2004年08月01日

シュヴァンクマイエル映画祭

svankmajer.gif渋谷イメージ・フォーラムで開催されていた「シュヴァンクマイエル映画祭」に参加。シュバンクマイエルはチェコのアニメーション作家で、いわゆるアート系のアニメーションを作る人。シュールレアリズムのグループに属している御大である。

最近では2000年に発表された『オテサーネク』が知られているが、今回は実験的手法のアニメーションと政治色の色濃く出た『スターリン主義の死』を含む短編作品集を観賞。会場に来ていたのは予想通り美大系列のオシャレなお兄さんお姉さんが多かった。

『石のゲーム』(1965年/9分/カラー/オーストリア映画祭受賞 )
実験映画によく観られる無意味な長回しを見せられたらどうしようと思っていたらその真逆。計算されつくされた細やかなカット割り、画面のバランス、テンポ、どれをとっても素晴らしい。オープニングテロップの手法も渋い。

『ワイズマンとのピクニック』(1969年/11分/カラー)
人間の棺桶を作るというオチが途中でわかってしまった。『石のゲーム』ほどの破壊力なし。

『アナザー・カインド・オブ・ラブ』(1988年/4分/カラー)
ヒュー・コーンウェルのミュージックビデオ。芸術云々というよりもクレイアニメーションと人間を手作業でモーフィングする技術にただただ感動。このビデオ欲しい。

『肉片の恋』(1989年/1分/カラー)
結構良くあるネタ。一発ギャグのノリ。

『フローラ』(1989年/0.5分/カラー)
記憶なし。

『スターリン主義の死』(1990年/10分/カラー)
今回の上映会に参加した目的の一つ。スターリンの石造の顔が切り裂かれ、臓物の中から新たな顔が。また大量生産される同じ顔をした労働者が搾取され、壊され、再生産される様子を粘土で表現していた。チェコの国旗でスターリンの顔が塗られるシーンはまさにプロパガンダ。チェコが背負っていた社会状況の上でコレが作られているところがカッコイイ。後述する『プラハからのものがたり』でシュヴァンクマイエル自身が語っている通り「主義ってヤツはやっかいだ」が透けて見える。

『フード』(1992年/17分/カラー)
朝食、昼食、夕食の三部作。非常に刺激的な内容。粘土と実写のモーフィングがポイントで使用され、年配者と若者の対比など社会的背景を含みながら表現が爆発。カッコイイのひと言。

『プラハからのものがたり』(1994年/26分/カラー)
今回『スターリン主義の死』と並んで見たかった作品の一つ。『スターリン主義の死』についても詳しく語られていた。一番心に残った言葉は、「今の西欧諸国ではシュールレアリズムは成立しない。しかしチェコは違う。私はシュールレアリストである。私の作品は政治的であり、一部はプロパガンダ映画だ。そして私の作品に登場する人物は100年後には意味を持たない」。この逆を言う人はたくさんいる。「後世に残る作品を」と。しかし、彼の言葉のほうがはるかに説得力がある。

Posted by Syun Osawa at 15:44