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2008年12月30日

〈宗教化〉する現代思想

仲正昌樹/2008年/光文社/新書

〈宗教化〉する現代思想「それを言ったら何でも形而上学」というわけか。結構面白かった。同業者?へちょこちょこ嫌味を書いているのは、彼の芸風なんだろうか? 特に左翼系の思想家、批評家に手厳しい。

というのも、マルクス主義者は唯物史観なわけで、彼らは形而上学ではないと思っている。ところが、観念論×唯物論という対立軸でものを考えることそのものが、二項対立の図式であるわけだから、それが形而上学であると筆者はいう。

人は何か「真理」みたいなものを求めているとして、そのことは構わない。それは考えることであり、哲学といえるからだ。ただ、ある人が「真理」に到達したと述べたとき、そこには形而上学が入り込む。そして宗教的にならざるを得ないというわけだ。

で、そういう風に考えていくとですな、冒頭に書いたように「それを言ったら何でも形而上学」となる。

こういうやらしい態度でものを考えている人は現代思想の〈宗教化〉が引き起こす事態に翻弄されることはないのだろうが、仲正が指摘するように「二項対立的闘争を通して『歴史』が『週末』に向かって進んでいく」という世界観・歴史観によって哲学は新興宗教のような求心力を持つようになってしまう。これはちょっと危ない部分も含んでいる。

哲学という営みが、伝統的な宗教の影響が弱まって不安が高まっている社会において、宗教に代わって、人々に真理、理想を提供し、少しばかり安心させる機能を担っているからである

だからこそ、いつも問い続けることが重要で、相対的にものを見ることをやめてはいけないという発想が出てくる。先日、相対主義批判のソーカル『 「知」の欺瞞 』を読んだばっかりなのに、相対主義もありだなんて話になると、どちらの主張も納得できる話だったのでちょっと混乱してしまうなぁ…。

今回の本ではヒューム哲学の道徳の話がとても参考になった。

ヒューム哲学では、“道徳の法則”だと我々が思っているものは、自然界に“因果法則”が見出される場合と同様に、習慣を通して、つまり他の人間との相互関係における経験が生じるような振る舞いを、各人の「情念」が志向する様になり、それに伴って「善い振る舞い」が社会的にパターン化されてくる。この場合の「共感」というのはルソーの自然状態における「哀れみ」のようなものとは異なり、お互いの「情念」を自分のうちでシミュレーションすることによって、相互の振る舞いを調整する能力である。人間世界の道徳や法の“起源”は、各人の習慣が集積された「習慣 convention」なのである。

こういう経験則に基づくような話だったらすんなり受け入れられる。

Posted by Syun Osawa at 00:28

2008年12月28日

坂本美雨インストア・イベント

2008年11月24日/14:00−14:30/タワーレコード新宿

坂本美雨インストア・イベントSisterMってこんなに大きくなってたのね。

ぶっちゃけ両親が大物過ぎなわけで、そこに関しては得してる面と損してる面があるだろうから一概に良いとも悪いともいえない。ただ、こうやって表舞台に立ってしまうと苦労している部分も多いのかもしれないね。

…などという、本当にどうでもいいことを考えながらイベントを観賞。歌い方が今のJ-POPの女性とは違った方向性でそれが何だか好印象だった。あと、バックトラックがめっちゃカッコ良くて驚いた。ROVOの面々がかなり絡んでいるらしい。納得。

Posted by Syun Osawa at 01:32

2008年12月26日

火の鳥 ヤマト編

監督:平田敏夫/1987年/日本/アニメ

火の鳥 ヤマト編80年代中盤に作られたアニメ『火の鳥』シリーズは『 火の鳥 鳳凰編 』しか観たことないと思ってた。ところが本作を観始めると、すぐに既視感を感じた。しかもかなり昔。読売テレビでやってた『アニメ大好き』かなんかで観たのだろうか…。

今回の舞台は古墳時代のヤマト。邪馬台国の王子オグナと敵対する熊襲の長・川上タケルの妹カジカの恋を中心にすえて、それが報われない運命の不条理を描いている。かなり有名なエピソードで、この作品が公開された近い時期だと『アリオン』なんかにも似たようなエピソードがあった気がする。

二人とも最後に埋められて死ぬというところが、凄く鮮明に記憶に残っていて、「この作品、前に観たかも?」と思わせたのだ。人の命が王のために謙譲されるというエピソードから埴輪の流れにつながる時代考証も踏まえつつの作品。まずまずな感じ。

Posted by Syun Osawa at 01:32

2008年12月24日

現代思想入門

仲正昌樹、北田暁大、毛利嘉孝 ほか/2007年/PHP研究所/A5

現代思想入門2ちゃんねるやブログなどを眺めていると、耳慣れない言葉が溢れていて、調べてみると哲学用語だったりすることが少なくない。現代思想の文脈を知らない僕にとって、それらの用語は外国語並みに意味不明なものだ。しかも僕にそれらを理解できるとは思えない。ただ、言葉の持つ深い意味はわからなくとも、どんな事が話されているのかといった雰囲気だけは掴んでおきたいので、この手の入門書をちょっとだけ読んでいる。

この本は人文系の高校生とか大学の一年生くらいの学生を対象にしているっぽい。導入本として小阪修平『 図解 現代思想 』から入ったのでそれほど障壁もないし、理系脳の僕にもわりあいサクサク読めた。普通はここから原著をがつがつ読んでいくのだろうけど、スペックの関係でそれは無理。そろそろお腹いっぱい。

ボルツの説明で、宇野常弘『 ゼロ年代の想像力 』に登場する決断主義と似たようなことが書いてあった。

増大する情報の奔流は、孤立化した人々を不安にさせるとともに、コミュニケーションへの欲望を募らせてゆく。その結果、サブカルチャーが活気づき、コミュニケーションはカルトと化し、情報はフェティシズムの対象となる。この傾向にメディアとしてのインターネットや携帯電話が拍車をかける。ウェブキャスティングは、個人へと解体された人々を再結合させ、電子ネットワークによって結びついた新しい無数の選択共同体である、ポストモダン的な「諸部族の群れ」を作り出す。

人文系の世界では、この手の話はいくらでも転がっているのだな。いわゆる宮台も言ってるような島宇宙化というヤツか。同じようなことを言っているのなら、みんな思い思いの言葉を使わないで、単純でわかりやすい言葉でまとめてほしいなぁ。

とりあえず、いろいろな言葉の意味を雰囲気だけ知ることができた。そういう意味でも、読者に優しい本だった。特に、仲正昌樹さんがまとめられていた下の図がかなり明快な感じだったので、とりあえず頭に入れておこうと思う。

現代思想の流れ

Posted by Syun Osawa at 00:46

2008年12月22日

病欠の日の不幸=宮崎駿が薦める本=踊ってみたのこと

不幸なことは重ねてやってくる。体調不良のため「明日は会社を休もう」と決めた日の帰り道、自転車のタイヤが破損した。今年に入って4回目だ。ちょっと多過ぎ…。

翌日、家で寝ている予定だったのに30分歩いて自転車屋へ行ことになった。しかも、行った自転車屋は1時間待たせた挙句に「直せない」との電話。自転車を取りに行き、そこから1時間歩いて別の自転車屋へ向かう。こちらの自転車屋の兄ちゃんはすぐに直ると言っていた(どないやねんな…)。

タイヤ交換の合間に銀行でお金を下ろそうと思ったら、銀行のキャッシュカードが破損していたらしく、ATMでカードが使えない。銀行の人に見てもらったら破損しているらしく、再発行することになってしまった。手続きで1時間近く待たされた上に、カードが届くのは10日先らしい…。

タイヤ交換が終わった頃、ちょっとだけ元気になってきたので、「世界の終り the end of the world」展を見に行くことにした。ちょっと距離はあるが、中野駅近くの自転車屋から池尻大橋にある 世田谷ものづくり学校 へ向かった。自転車で行くと、三宿あたりは入り組んでいるためかなりわかりにくい。散々迷って何とかそれらしき場所に辿りついたものの、今度はどうやって入っていいのかよくわからず。テンションが下がり、体調も悪くなってきたところで心が折れた。粘って探す気力がうせたので、あきらめて帰った。

帰り道、いつの間にか夕方になっていた。そこで D-Snap からタイミングよくColdplayの「 Yellow 」が流れてきて、「どないやねんな…」って感じでたそがれてしまったので、ちょっと書いてみた。こうやって書いてみると、全然たいした不幸じゃないなぁw

手に入れた本など

『ロスジェネ 別冊2008』(かもがわ出版)
市川佳孝『Flash 3D Design Book』(毎日コミュニケーションズ)
伊藤のりゆき 他『FLASH ActionScript辞典』(翔泳社)

ポプラ社の宣伝誌『asta』で新海誠さんが書評を書かれていた。今はロンドン在住らしい。なんか有名ミュージシャンが海外に拠点を求めるのと似てますねぇ。イギリスのミュージシャンのPV作成とかそういう方向があるなら凄いな…。

『図書』の臨時増刊号では「私のすすめる岩波新書」として著名人がそれぞれ数冊の本を紹介していた。その中で宮崎駿さんを発見。F.パッペンハイム『近代人の疎外』、中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』、堀田善衛『スペイン断章―歴史の感興』の3冊を紹介されていた。

メカネコドン 予告編

青木純さんの作品。この人、本当に器用ですね。しかもどの作品も非常に面白い。絵画で言うところのマチエール対するこだわりみたいなものが強いんでしょうか。

産学公連携による『アニメの教科書』

お上が作っていようが、どこかのプロダクションが作っていようが、この教科書がアニメ制作の技術書として書かれているのならぜひ読んでみたい。ちなみに漫画の世界では、伊藤剛さんが実技にも批評にも耐えうる「漫画の教科書」を作ろうとしていることを、宣伝誌『ちくま』の連載で書かれていました。

FLASHアニメの会社

ニッチな、あまりにニッチな。ところで今年も 紅白FLASH合戦 ってやられているんですね。ニコニコ動画と絡めるなら、踊ってみた紅白とか演奏してみた紅白とか歌ってみた紅白とかいろいろできそうでいいですね。可能性がたくさんあるってのはいい事だ。

これがAira Mitsukiなわけです

こういうのを読んでしまうと、僕がAira Mitsukiに軽くハマってしまったのは、ある意味必然だなぁと思う。

宇多田さん…大丈夫かな?

何だか激痩せな印象を受けます。まぁ…ほっとけよ!って話なんですが、ダウナー路線の迷路に入り込んだのではないかとちょっと心配です。

ぬるぽんが踊り子を卒業するらしい

プロのダンサーになるのが理由だそうな。回を重ねるごとに始まりまくったぬるぽんもついに終了ですか…。今年はまころんの卒業から始まって、ぬるぽんの卒業で幕となりました。踊ってみたの素晴らしいところは、いつか終わりがあるところですね。

ところで…。

ニコニコ動画の「踊ってみた」タグをまったく知らない人のためにちょっとだけ。彼女や彼らのアップする動画は、基本的にはアニメなどの曲にあわせて同じ振りを踊るという単純なものですが、実はかなり革新的な部分を含んでいると思うんですね。

それは動画の多くが編集されていることです。人気のある踊り子さんはたいてい複数回踊って、いいところをつなでいる。これは技術のレベルに違いがあるだけで、今のTVメディアがやっている手法とまったく同じなわけです。だから当然、映像的にいいものができる。これは一発撮りとは革命的に違うステージなわけです。アップや別カットを挟み込むなど、高度なことも簡単にやっているし、エンタメとして普通に面白いものも多い。表現の底上げは確実に起こってる気がします。

℃-uteのヒトラー騒動

「ヒトラーおじさん」は熱いですね…。じゃあ「ホーおじさん」にすればよかったのか問題というのもありますが、政治ネタは扱わないのが吉でしょうかね。

宮台真司の言葉が心に響かなくなった件

心に響いた頃があったのか問題というのが別に立ち上がるわけですが。

構造主義とサイエンス

なんか最近、科学と絡めるの好きですね。フーコーやドゥルーズと科学を絡めるのは「混ぜるな危険」って気がするので、取り扱い方(受け止め方)にはちょっと慎重になっちゃいます。

ホリエモンが語るベーシック・インカム

この状況が新しい。

派遣は正社員と同じ食堂でメシ食うな!問題

これはとても複雑なエントリ。ベクトルの先が非常に見え難い。スレッドの反応も錯綜している。こういう難しさを上手く読み解ける人の話はちゃんと聞きたいですね。

Posted by Syun Osawa at 01:15

2008年12月20日

Saori@destinyインストア・イベント

2008年11月22日/17:00−17:30/ISHiMARU SOFT2

Saori@distenyインストアイベント休日に秋葉原へ行ったことのある人だったら、路上でパフォーマンスをする彼女の姿を何度か目にしたことがあるかもしれない。Youtubeを漁れば、彼女の路上時代のパフォーマンスを数多く見つけることができる。僕も何度か秋葉原で歌う彼女の姿を見た記憶があるが、正直言ってほとんど覚えていない(しかも別人かもしれない)。

そんな彼女のイベントに行ったのはデートピア商法にヤラれていることが一番の理由なわけだけど、そういう下品な理由を除いても彼女の新譜は良いのだ。もしかしたらAiraの新譜より良いかもしれない。いや、どうだろ? そこまではわからないな…。

ともかく『 サヨナラリヴァイバル 』は本当に良い曲だと思う。

僕の場合はこれに尽きてる。音自体はAiraと同じプロデューサーということもあってかなり似ているものの、流行を追ったフランス産ポストエレクトロ系の音とかではなくて、古典的なCulture Beatの『Mr. Vain』並みの下品な音に聞こえるのだ。僕はそのあたりの下品な感じが凄く気に入った。さらに、この曲ではファンが打つMixも凄く良くて、それを含めたところで『サヨナラリヴァイバル』は完成しているようにも思う。

知らない人はGyaOの ヌキっ娘カタログ に出演している彼女の姿を見ると、何かいろいろわかるかもしれない(わからないかもしれない)。

Posted by Syun Osawa at 00:38

2008年12月18日

火の鳥 鳳凰編

監督:りんたろう/1986年/日本/アニメ

火の鳥 鳳凰編この映画を劇場で観たのは小学生の頃だったか。たしか『時の旅人』という映画との同時上映だったような気がする。月日の経つのは早いもんですな。

驚くべきことに、この作品から受けた印象は、小学生のときに僕が感じたものと大差がなかった。殺戮の限りをつくしていた我王の罪が、テントウ虫を助けたというエピソードだけで許されるわけもなく、その一方で茜丸の愚かな振る舞いに同情することもできない。そのため、勧善懲悪のカタルシスを得ることができないのだ。僕はただ、愚かなキャラクターたちを眺めながら、優しさと罪深さは誰の心にも同居していて、それはいつの時代も変わらないということを、小学生の僕も今の僕も同じように感じさせられたのだった(成長してないなw)。

プロットについては、悪人と善人と思われる人間を最初に対立する形で配置し、そのキャラクター像を後半に入れ替えることで深い人間像を作り出しているところに、手塚治虫のストーリー作りの上手さを感じる。

Posted by Syun Osawa at 00:13

2008年12月16日

図解雑学 現代思想

小阪修平/2004年/ナツメ社/四六

図解雑学 現代思想「知」の欺瞞 』を読んだのに、現代思想のことを全然知らない。これではあの本の面白さも半減してしまっているに違いないと思い、ちょっとだけ現代思想の本も読んでみることにした。…なんて言ったところで難解な原著など読めるはずもないので、入門書だけでお茶を濁すのが趣味者としては正しい姿だろうと思う。

この本の著者はなんと小阪修平さん。ぶっちゃけ凄く見通しのいい本だった。

ニーチェからはじまり、精神分析学と言語学、実存の哲学と現象学、分析哲学、フランクフルト学派、構造主義、ポストモダン主義へと連なる流れが明快に書かれている。それがどの程度正しいのかはまったくわからない。こんなに簡単に書いてそれが理解できるのなら、そもそも哲学なんて必要ないわけで、実際には雰囲気だけをアナウンスするための導入本としてこの本は機能しているのだろう。この歳になると、導入の障壁は少なければ少ないほどいいからね。

哲学者の使う造語の意味がちょっとだけわかった気がした。

Posted by Syun Osawa at 00:46

2008年12月13日

ニセ科学フォーラム2008

2008年11月9日/学習院大学 西5号館 地下B1教室

今回は、現代思想や科学哲学の中に潜む怪しげな科学の話を『「知」の欺瞞 』の訳者でもある田崎晴明さんから聞く事ができた。特に相対主義に起因していると思われる理科教育界の怪しげな言葉に対する突っ込みは面白かった。

「科学が絶対ではない」という相対主義的な科学観は別に悪いことだとは思わないが、その行き過ぎには問題があるといった話だった。科学にできることに限界があることは自明であって、だからといって、全否定されるものではないのだ。そして、そういう解釈論めいたものを、理科教育の土台の部分に置くのもちょっと変なのだ。

例えば批評の世界などでは、現在の状況が「ポストモダンが自明となった世界」であるとして語られることが多い。そこでは、科学も一つの価値観に依存した世界観に過ぎないとみなされ、中には科学と疑似科学の対立でさえ別々の島宇宙同士での対立でしかないと言ってしまう人もいる。

たしかに科学と擬似科学の間にはグレーなゾーンが多いし、明確なラインなどあるわけがない。だからといって、何でもありというわけでもない。日常生活を通して経験した中から、合理的に取捨選択されているものが科学を形作っている。そのことを根拠に「結局は自然科学という考え方」とするのはかまわないが、既存の知見との整合性を図りながら論理的にネットワークが築かれてきたその考えを切り崩すのは、どんな天才哲学者にだってできるとは思えないのだ。

『水からの伝言』などの有名なニセ科学話は、個人的にはもういいやって気持ちもあるのに(最近はナノイーイオンですか?)、世間的には未だに教材として使われていたりするらしいし、ゲルマニウム関連の商売も繁盛していたりするから驚きだ。

これらの問題が深刻なのは、怪しげな話が科学的な装いによって真実味を帯びていることと、情報の流通段階でそれらの情報の怪しさをきちんと知らせることができず、メディア戦略次第でニセ科学情報が科学的な警鐘を上回ってしまうとが問題なのだろうと思う。

もちろん科学的に正しいことだけを流すように情報統制しようなどと誰も思っているわけではない。むしろ自由を守るため、何でもかんでもすぐに信用しないといった程度のリテラシーを育てることが、早急に求められている課題だと考えている。

Posted by Syun Osawa at 18:24

2008年12月11日

「知」の欺瞞

アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン/2000年/岩波書店/四六

「知」の欺瞞僕の頭の中にあったぼんやりとした思いが少しだけ整理されたように思う。

本の要旨はシンプルだ。ポストモダン系の知識人がアナロジーとして使用する科学的な言説に対して、理論物理学者がその用法の誤りにマジレスした本である。ざっくりしたことを知りたければ、堀茂樹さんの「 きみはソーカル事件を知っているか? 」を読めばわかる。

僕は常日頃、理系と文系をバランスよく横断しながらものを考えたいと思っており、そういう意味でも今回の本はとても興味深い内容だった。ただ、残念なことに僕自身の能力的な限界があり、今回の本については文系的にもわからず、理系的にもわからないという有様だった。

そのため、僕には比喩として科学的な知識を用いる思想家たちの言葉も意味不明だが、マジレスしたソーカルたちの言葉も正確には理解できていないところが問題として残ってしまった。そうなると著者の意図した方向とは少しズレてしまい、後はどちらの言説を信じるのかということになってしまう。僕の場合は理系的な(という言葉が正確でないなら科学的な)自然観で世界を見ているし、経験と理論を交互に往復することでしかものを考えられないため、科学者のマジレスを信じることになる。

こう書くと、結局は「『どちらの主張を信じるか?』という社会的な要因で決着が図られるているじゃないか」ということになってしまいそうなのだが、そうではない。僕の頭が悪いだけなのだ。そして、言葉だけで決着をつけることにも違和感がある。その点は以下のように示されていた。

何らかの考えが論駁できないという事実だけでは、その考えを受け入れるべき理由にはならない

これは「うまいこと言ったもの勝ち」「話題性をつくったもの勝ち」といった価値観が肯定される時代の空気に対して、そうじゃないよともう一つの視点を僕に与えてくれる。そして、この本の最後に書かれた以下の言葉が、僕が今後ものを見たり、考えたりする上での指針になったことは間違いない。

われわれが望むのは、合理主義的ではあるが教条主義的でなく、科学の精神に則ってはいるが科学主義的でなく、諸々の意見にひらかれてはいるが軽薄でなく、政治的に進歩的ではあるが党派的でない知的な文化が誕生することだ。

Posted by Syun Osawa at 01:10

2008年12月09日

ボクシング=今年もいろんなアニメ=ニュースとか

パッキャオ×デラホーヤは、まさかのパッキャオ勝利。パッキャオを応援してたから、序盤はかなりテンション上がった。出入りの早さが半端ない。ただ何と言うか、K-1的過ぎるって言うか、うーん。デラって何でこの試合したんだろう…? 途中からデラのあまりの動けなさに悲しくなってしまった。この間のカルザゲ×ロイ・ジョーンズJr.といい、何だかちょっと複雑な気分。

そのほか、現役選手の中で一番好きなリナレス(帝拳所属)は順調に2階級制覇! 決定戦だったり、相手が9位の選手とかいろいろ突っ込まれる要素はあるけど、無傷でここまで来てるんだから今後を期待して当然でしょ。伸びしろありまくり。

手に入れた本など

山本義隆『新・物理入門』(駿台文庫)
学習参考書『中学理科ターゲット80』(旺文社)
学習参考書『これで解けるぞ! 中学理科計算』(文英堂)

『新・物理入門』の山本義隆は元・東大闘争全学共闘会議代表という凄い肩書きを持っている人。学生時代はかなりの秀才だったらしいのだが、研究者にはならずにドロップアウトして予備校講師になった。この本はそんな彼が記した高校生のための学習参考書であり、今でも名著として版を重ねているそうな。やり直し系の物理をやっている僕にはうってつけの本なので買ってみたんだけど、ちょっと書き方に癖があって難しそう。

例えば、電磁気のところでは磁界の強さをあらわすHを使っていない。F=mH、m=Φ=BS、B=μHという感じで理解していたのでちょっと動揺してしまった。

Les films 2008 des Gobelins

今年もアニメいっぱい。

クリス・ロビンソンが選ぶ今年のベスト・ショート集

今年もアニメいっぱい。その2。

ニコニコ初の3D系PVってここまで来てたんだ…

こんなに高いクオリティでやってるとか全然知らなかった。

アナログ風のアニメPVが流行している?

多いですね。アニメでPVという流れ。日本でアニメを使用したPVの原点はどこなんだろうなぁ…。BOOWYの『鏡の中のマリオネット』かな? たしかアニメパートの監督は北久保弘之か川尻義昭がやっていたような気がするが覚えてない。

Perfume - Polyrhythm (Hard Floor Remix)

Remixed by K.466

なかなかゴツンゴツンしてて、フロアライクな仕上がり。

ちゃーぽんもエレポップユニット路線らしい

ちゃーぽんって言ってもBEE-HIVEカメラとか見てない人には、何?って感じでしょうけど。

こういうマドンナが好き

80年代の美しかったマドンナから、魔女と化した現在のマドンナまで全部好きです。

アイドルと放送作家の結婚

おちまさとさんと河辺千恵子さんが結婚していたことを今知った。どちらのブログもRSSリーダーに登録してるのになぁ。ぜんぜん気づかなかった。

ノーベル賞科学者がみた教科書

中学校の理科の教科書は東書の4冊を持っているが、驚くほど薄くてビジュアル資料集みたいな感じ。副読本とかないと、あの教科書だけで勉強するのは厳しいでしょうね。

松下が「ナノイーイオン」とか罪作りなことを始めた件

マイナスイオンの○○倍という宣伝文句らしい。リテラシーないよね。

ホンダがF1から撤退するらしい

結局、ホンダの二度目の参戦って何だったんだろう…。

日本人に主人公を“萌え化”された開発者が苦言

ようするに日本人にロリコンが多いってだけの話。

ロシアでジャーナリストになることは自殺である

1992年以来、49人のジャーナリストがロシアで殺されているらしい。

人々はインチキ健康食品にお金を浪費している

僕の身の回りにも、有機食品が健康にいいと思っている人がかなり多い。たぶん多数決をとれば圧倒的多数は有機食品=健康というイメージを持っている人たちだ。

Posted by Syun Osawa at 01:48

2008年12月07日

藤田麻衣子インストア・ライブ

2008年11月7日/19:00−19:30/タワーレコード新宿

何気に2回目。

歌った曲は HMV池袋 と同じだったような気がする。うーん…良い!

特に『 運命の人 』という曲はすごく良い。アレンジで加えられているシンセアルペジオが印象的で、電子音楽が好きな僕の琴線にスッと触れた。もちろん彼女の得意とする弾き語りも好きなわけだけど、バラードじゃない展開もちゃんと見せているこの曲はお気に入り。

今回発売された2ndアルバムは『緋色の欠片』などの女子向け?ゲームに提供された楽曲が多く収録されているため、そういう文脈でも楽しめる作品なのかもしれない。2ちゃんねるを見ていると、ゲーム自体もなかなか熱いようで、そっちからの女子流入が結構あるんだろうね。ただ、乙女系はおろかゲームをまったくやらないので、さっぱりわからん。

12月にライブがあって、そちらはバンド編成もあるらしい。チケットが取れなかったのが悔やまれる。

Posted by Syun Osawa at 16:38

2008年12月05日

桃井はるこ&AKB48ライブ in 浜祭 '08

2008年11月3、4日/16:00−17:00/浜松町

浜松町グリーン・サウンドフェスタ東京タワーの下で夕方から行われたミニライブ。『浜松町グリーン・サウンドフェスタ〜浜祭〜』のライブに桃井はることAKB48(チームK)が出演するということで行ってみた。ちょっと濃いめ。

ここでいう濃いというのは、一般人とかち合ってしまうから濃いという意味だけ。日曜日夕方の亀戸サンストリートとかね。そこはまぁ…仕方ない。

モモーイのライブは本人が煽ってることもあってヲタ芸が凄かった。個人的にはmixとかヲタ芸はそれほど好きなわけじゃないけど、モモーイのライブってのはそういう部分を抽出した過剰領域なんでしょうね。個人的には『LOVE.EXE』が聴けたので満足。

AKB48は新曲の『大声ダイヤモンド』がいい感じだった。そして、華やかな雰囲気が思いのほか良かった。そもそもAKB48のライブを観たこと自体初めてで、だからこそお試し的に東京タワーまで行ったわけだ。最近では地下アイドル最高峰のAKB48がハロプロの売り上げを上回るという事件も起きているらしく、どっちが落ちてるのかという話はあるとはいえ、やっぱりアイドルグループはいいですな。アイドリングも含めて、バトルロワイヤル具合はいい感じです。

残念なのはAKB48に関しては、これまでまったく興味がなく、メンバーも数人しか知らないこと。アイドルヲタは基本的に文脈消費だと思っているので、彼女たちの文脈を知らないままではAKB48にハマることは難しい。だから、彼女たちを知る第一歩として秋葉原の劇場に足を運んでしまうのか、俺?…って話になってしまうわけだけど、どうしようかなぁ…。

AKB48の華やかさに負けて、翌日に同じイベント内で行われたAKB48(チームA)のライブも鑑賞。こっちもいい感じ。前日に観たのがチームKで今回がチームA。チームBは観てないわけだけど、どこ推しかって言えば、まぁチームK推しになるかな?

Posted by Syun Osawa at 01:10

2008年12月03日

マンガの創り方

山本おさむ/2008年/双葉社/A5

マンガの創り方この本に10年前に出会いたかった。

たくさんの本を読み込んで全体を語る批評的な本ではもちろんない。一つの短編を徹底的に解体して、わずか数十ページの中に凝縮されているプロの技術について解説した本である。

著者が描いた『遥かなる甲子園』は高校生の時に読んだ。そのとき、あまりの展開の(泣かせの)上手さに感動しまくったわけだが、まさかあの作品がこういう用意周到な演出と考え抜かれた箱書きの上に成り立っていたなんて思いもしなかった。

僕はこれまでにもこの手の本を何冊か読んでいる。例えばストーリーに関しては『 別冊宝島144 シナリオ入門 』『 ベストセラー小説の書き方 』『 【沖方式】ストーリー創作塾 』『 ミステリーの書き方 』などを読み、漫画に関しては『 石ノ森章太郎のマンガ家入門 』などを読んだ。どれも面白く、勉強にはなったのだが、残念ながら自分の問題系にピッタリとくるものには出会えなかった。

そういう意味で今回の本はドンピシャで僕の問題系に即している。自分の好きなように漫画を描いていた人が、客を意識しながらネームを書くことへ意識転換するときの具体的な方法。そういうのを学んだ気がする。箱書きやネームを書く上での注意点など、学んだ重要事項をここで列挙したい気持ちを抑えきれないが、それはともかく自分で実作をやってみることにつなげたいと思う。

Posted by Syun Osawa at 00:40

2008年12月01日

I am Robot and Proudインストア・ライブ

2008年10月30日/20:00-21:10/タワーレコード新宿

なかなかのガチライブだった。

20時からGutevolk+ausが30分やって、20時40分くらいからI am Robot and Proudが30分。最初に演奏したGutevolk+ausに対して客の反応が悪かったのは(僕も含めて)、単純にI am Robot and Proudのライブだと思ってたからじゃないのかな? 彼のゲストかサポートとしてGutevolk+ausが登場するのだと思っていたら、実は30分ずつの対バン形式だった。

Gutevolk+ausのほうがエレクトロニカって感じの音なんだけど、個人的な趣味としては断然I am Robot and Proudなんだな。カレーの成分表示みたいなもので言えば、ビートはダウンビートちょい強め、シンセは丸め、メロディは切なめ。ノイズをほどよくブレンドしながら、機械社会の哀愁みたいなのを上手に滲(にじ)ませているところが良い。

そもそもマニアックなエレクトロニカが好きなわけではなく、ダウンビートが好きな筆者はメロディ強めでビートのある電子音楽が好きなのだ。そういう嗜好からいくと、エレクトロニカ方面ではI am Robot and Proudはピッタリ当てはまる。

サラッと登場して、気の効いたことを言うでもなく、淡々と演奏し、軽く手を振って何も言わずに去っていった。うーん、そういうのカッコいいですね。あと、人力シンセアルペジオとかもカッコよかった。

この曲も生で見れた。アルバム全部聴きたいなぁ…。

Posted by Syun Osawa at 00:25