bemod
« 2010年04月 | | 2010年06月 »

2010年05月30日

2週間で美人になる本

西原克成/2000年/マキノ出版/四六判

2週間で美人になる本「2週間で美人になる」とか、男の僕には全然関係ない話なので、これをいきなり読むことはあり得ない。それでもこの本に出会えてしまうところが、インターネットの素晴らしいところだと思う。

ネットで「顔の歪み(性格には左右の違い)」や「顎関節症」について調べていたら、そうした症状を改善することを指導する本としていくつかのサイトで紹介されていたのがこの本だった。タイトルには「2週間で〜」とか「美人になる〜」というような刺激的なタイトルがつけられているが、読んでみると、片噛みの癖や口呼吸、うつぶせ寝や横向き寝の改善方法について書かれている。

この中ですでに実践しているのは、片がみの癖を直すためにガム噛み。僕の場合は左側のはたらきが弱かったために、ずっと左側を中心に噛んでいた。この本にはある程度片方で噛むことに慣れてきたらガムを1つずつ左右に入れて噛むようにするよう書かれていたので、早速実践(2つ噛むのはもったいないので,1つを2つに分けてw)してみた。これは順調。

その他の改善方法もすべてトライし始めているのだが、口呼吸を鼻呼吸に変えることはなかなか難しい。特に寝ているときに鼻呼吸にするのは現段階では無理。本で紹介されている通り、口にテープを張って強制的に鼻呼吸をするようにするしかない。あとは、横向き寝。こちらも直らない。朝起きると必ず横向きになっていて、それがいつも同じ方向だ。枕なしでの睡眠も始めたものだから、朝横向きになっている上に、首が枕がない分下に曲がってしまってちょっと痛い(これはかなり逆効果な気が…)。

ネットで調べると、人間は寝ている間に何度も寝返りを打つから、枕があったほうがいいなんて書かれているものもあるくらいで、こちらのほうは少し不安な気持ちもある。実際、寝ている間に自分が寝返りを打っているという確たる証拠もないし、起きると毎回同じ向きに寝ているので、たぶん偏りはあるのだと思う。今はこの本に従って、枕無し、鼻呼吸、仰向けで寝れることを目指してみる。

Posted by Syun Osawa at 01:59

2010年05月25日

Aira Mitsuki LIQUIDROOMワンマンLiVE

2010年5月5日/18:30−20:20/LIQUIDROOM

昼間に会社の人の引っ越し祝いに行ったりしていたので、このライブに行くかどうか迷ったけど、結局行くことに。とはいえチケットは持っていない。LIQUIDROOMは箱の大きさが微妙なので、当日券があるのかどうか気がかりだったが、何とか入れた(ほぼ満員だったから危なかったw)。

ちゃんとした構成のライブを見たのは、PLASTICのツアー 以来かも。そのときと比べると、今回は少し印象が違っていた。生バンドを入れての人力テクノ風の演出で、Sawagi(僕はこの人たち知らんかった)がサポートとして加わっていた。Sawagiって、Daft Punkの「Robot Rock」のPVそのままな感じなんだが、エレクトロ業界(え?)では、こういうあたりが何周も回って実は凄いカッコいいスタイルってことになってるのかな? たしかに、彼らのインストはカッコよかった。

人力でダンスミュージックをやるっていう手法は古くからあるものの、こういう方向にググッとハンドルを切ったのはなかなか面白いと思う。Saori@destinyのツインキーボードあたりから、こういう傾向が強くなっているのかも。ただし、Airaのドラムはどうなんだろ?w PLASTICのツアー でもやってたし、本人がやりたいのかねぇ。もうちょっとDTM系のツール使うとかさ、元ピンパンのチョッパーKOGA嬢(もしくはSquarepusherとか)みたいにベースやったらかっこよさそうなのにね。あと、個人的にはダンスミュージックをライブでやるってことに対するこだわりみたいなものは、どんどん追求していってくれると嬉しい。

…とかブツブツ言いながらも、バンドが加わったことで一気にライブ感も増したし、かなり盛り上がったことは間違いない。個人的にはインストアとは違うライブが見れたので、それだけでかなり満足だった。ただまぁ、そういう一日の熱狂というのはすぐに過ぎ去るもので、最後にちょっとメタなアイドル話なども書いておきたい(彼女がアイドルであるという前提で)。

今の時代は良い悪いは別として、浮上してきたものに乗っかっていかないといけない。というのも、何が浮上するかというのが非常に確率的なものになっている感じがするからだ。ももクロや東京女子流は完全にAKB48に乗っかってファンとアイドルの間の近さ勝負をしている。ギリギリの距離感でファンに同じCDを何枚も買ってもらう路線にリテラシーがあるとかないとかももはや関係なくなっている。その商売が批判に晒されながらも受け入れられているのであれば乗っかっていこうというのが今っぽい感じがするわけだ。

2chのアイラスレに書かれていたが、1stアルバム『COPY』から「ロボット・ハニー」あたりのPerfume的なるものへの乗っかり方は非常に良かったのだが、その後は路線を外して独自路線を模索し始めた。これはこれで決して悪いわけではないのだが、市場を視野に入れたとき、「取り入れて拡張(embrace and extend)」という方策で乗っかっていくことが最適解とされている昨今の状況を見据えれば、若干コンテクストを外しているような気もする。このコンテクストの外し方(外れ方)が吉とでるか凶とでるか…とか考えると、プロダクションの仕事ってつくづく大変な仕事だと思うよね。

Posted by Syun Osawa at 01:01

2010年05月24日

革命の夜、いつもの朝

監督:ウィリアム・クライン/1968年/フランス

革命の夜、いつもの朝1968年のパリで起きた反体制運動(五月革命)のドキュメンタリー映画。

最近のドキュメンタリー映画は、ドキュメンタリーと言いつつ撮り方が恣意的だったり、インタビューなどによって演出が加えられるなど、視聴者にわかりやすいコンテクストが提示されることが多い。しかし、この映画はほんとそのまま。映像を淡々と繋げましたって感じだった。そんなわけだから、最初のほうは、映っているシーンがどういう状況なのかもわからないまま見ていた。途中でWikipediaなどの力を借りて、少しくらいは理解することができたが、最後までぼんやりした印象は消えなかった。

この運動は日本の全共闘運動ともリンクしており、1968年という年は日本でも重要な年として位置づけられている。僕も小阪修平『 思想としての全共闘世代 』やスガ秀実『 1968年 』などを読んで、日本の1968年についてはその輪郭をなぞってはいるものの、この映画の雰囲気は日本の全共闘運動とは少し違った雰囲気を持っていて、そこにちょっと戸惑った。

まぁ、雰囲気が違うのなんて当たり前なんだけど、パリが大混乱に陥っているわりにはみんな淡々としている。逆を言えば、当時の日本の全共闘運動がセカイ系的というか、自閉的に芝居がかった運動を展開していたとも言えるかもしれない。また、運動を主導しているのは学生ながら、老若男女を問わず様々な世代の人の声がおさめられており、日本の全共闘運動よりも運動と生活が近い場所にあるようなシーンが数多く見られた。

結果的には、政府がそれなりに要求を飲んで事態が収拾したらしい。ただし、ドキュメンタリーの中で学生や労働者達が熱く語っていた「革命」については、何一つ起こることなく終わる。革命の未達成という点は日本と同じだ。だから最終的にはぐだぐだになってフェードアウトしていった印象だけが共有されていると思うが、それでも今の状況と比べたとき、当時は少なくとも今より「熱狂」みたいなものがあったと思えるし、その点に関しては正直うらやましい。

今は、そういう熱狂が暴走を招くとして、関係の調整みたいなことばかりに主眼が置かれている気がする。それは大変結構なことだが、そういう調整能力(コミュニケーション能力と言い換えてもいいかもしれない)ばかりを前面に押し出したところで、当時の熱狂だったり謎のモチベーションみたいなものは涌いてこないのではないか。あの根拠なき熱狂は、今はもうニコ生や2ちゃんねるでしか体感できないのかもしれない…。

Posted by Syun Osawa at 00:29

2010年05月20日

100億稼ぐ仕事術

堀江貴文/2005年/ソフトバンククリエイティブ/文庫

100億稼ぐ仕事術今をときめく佐々木俊尚氏がゴーストライターとして書いたと言われているビジネス書(?)。この本に関わった佐々木氏と著者である堀江氏が、発行日から5年経った今も第一線で活躍しているわけだから、本の中には何かしら重要なことが書かれているかもしれないと思ってサクッと読んでみた。

本の前半部分に堀江氏の起業するまでの半生が簡潔に書かれていて、それがとても魅力的だった。東大のバイト時代にすでに世のサラリーマンよりはるかに高い給料を貰っていたあたりは、同じく東大の学生時代に起業したリクルートの江副氏と同じ。エイベックスのMAX松浦氏も学生時代に、貸しレコードでかなり儲けていたらしいし、このレベルの人たちはすでに学生時代から次元が違うようだ。

興味深かったのは、メールを非常に重視している点だ。メモも取らず、すべてはメールの中で管理していたという。たしかに、言われてみればその通りだと思う。メールは今でも誰かと連絡を取る重要なツールとして機能しているし、携帯でもマンガ喫茶でもどこでも利用できる。メールの返信が億劫だと思っている僕の考えなどは、その時点で終わっていたわけだ。

EXCELやPowerPointを批判していたのも面白かった。EXCELを使うと余計な情報や仕事が増えるという考え方も非常に納得できる。僕の会社でもEXCEL好き(マクロ好き)な人が結構いて、どーでもいい表をみんなでこぞって作っている。そういう行為を僕はどこかアホだと思っていたのだが、回りのみんなは「便利になった〜」と喜んでいて、さらにEXCEL信奉が広がるという状況がある。だから、僕の考え方はマイノリティなのだと思って諦めていたところに、堀江氏が批判的なことを書いていたので、ちょっと安心w やはり「EXCELやPowerPointを使って,仕事をした気になる」ことは悪なのである(声を大にしては言えないが…)。

ところで、今、堀江氏はtwitterとブログにハマっている。さらに、ニコニコ生放送に有料チャンネルを持つなど、多用なツールを使いこなすというハイブリッドな戦略に出ているようだ。堀江氏は今でもメールがビジネスツールの中心だと考えているのだろうか? それとも、そういった思考回路は捨てたのだろうか? そのあたりは少し気になった。

Posted by Syun Osawa at 01:18

2010年05月19日

ももいろクローバー・メジャーツアー2010

2010年5月4日/12:00−13:20/秋葉原UDXシアター

2chのももクロスレを見ると、内情がいろいろわかって面白い。何でもこのツアーなるものは、シングルをオリコン上位に登場させるための販促イベントも兼ねていたらしい。

実際のところ、ライブありきの有料イベントではあったんだけど、入り口で新曲のCDが1枚貰えた。そして、ライブ終了後に、今度はメンバー単体の顔がジャケット写真になっているCDを、目当てのメンバーから直接購入する(お渡し会)という流れになった。よーするに、2000円のイベントではなく、3000円支払って、イベントとCD2枚を手に入れることになるわけだ。

いわゆるAKB商法(オタクがCDを複数買いすることを積極的に推し進める戦略)に、さらに乗っかっていく形で生まれたアイドルということもあってか、こういう流れは当たり前なのかもしれない。まぁ…実際のところ、「CDを購入した数=その音楽を聴いた人」ではないわけだし、ニコニコ動画やYoutubeをでPVが見れてしまうのだから、ライトな層がCDを買うこともない。であれば、CDを購入するための動機を、音楽を聴くということ以外に用意するという考え方に至るのは、非常に真っ当である。

ももクロが展開している「AKB48のイベントから漏れた層を直撃するような戦略(ファンとアイドルとの近さ勝負)」はとてもクリティカルだし、面白くもある。僕自身、ニコニコ動画で「踊ってみた」タグのまころんや、ダンスロイドを喜んで見ているのは、まさにこういう近さ勝負を面白がっているからだ。

こういうメタなアイドル層が増えてきたせいか、ダンスロイドなどはアマチュアであるにもかかわらず、2chの地下アイドル板ではAKB48関連のスレに食い込んでかなり上位に来ている。そして、プロなのかアマなのかどっちがどっちかわからないような層の重層化(カオス化)が、そのままアイドル業界に根付いていたスターシステムを破壊していることも間違いなさそうだ。

しかしまぁ…そういうきな臭い話はともかく、今回のイベントで何が素晴らしかったって、全曲生歌だったことだ。あれだけ激しくダンスを踊りながら、全曲生歌ってのは凄い。地下アイドルの最前線は近さ勝負をしているだけあって、ライブ感を大事にしてるということなんだろう。リップシンク上等のPerfumeの流れを汲んでいるデートピア回りとはかなり方向性に違いが出てきたな。あっちは、生歌っていうより生演奏にシフトしてるが、生演奏と生歌、どっちが強いかと言われれば、僕は生歌に軍配を上げたい。今のところ。

Posted by Syun Osawa at 00:57

2010年05月18日

もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

岩崎夏海/2009年/ダイヤモンド社/四六

もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらこの前、書店へ行ったら『週刊ダイヤモンド』の表紙にこの本の表紙のイラストが使われていてビビッた。この本、相当売れているっぽい。

たしかにこの本は、何と言うか…目新しい。それは間違いない。小説を通して、ドラッガーの思想に触れるという構造になっていて、しかもそれをビジネスマンの物語として展開していないところに肝がある。もしもこの本の読者層がビジネスマンだとしたら、主人公がビジネスマンでは話が現実的になりすぎて、瑣末な突込みが多くなされてしまうだろう。ストーリーはあくまで女子マネージャーが野球部を牽引しながら甲子園を目指す野球の話である。にもかかわらず、それを読者が勝手にビジネスの教訓としても受け止めてしまうからこそ、ヒットに繋がったのだろう。

主人公の女子マネージャーは、常にドラッガーの『マネジメント』の助けを借り、そこに書かれている言葉を信じて突き進んでいく。その妄信的な感覚に妙な違和感も感じなくはないが、そこは信じることの強さがあるのだと思えばいいし、そもそも「マンガで読む〜」系のHow to本だと考えれば、その導入としては非常に上手くいっていると思う。

僕自身も導入マンガを描いてみたいなぁとか、いろいろ思っていることもあって、この本にはかなりの刺激を受けた。読者に伝えたいテーマとそのテーマを走らせるストーリーとの距離感、導入本がそれなりの正当性をもつためにはそこが一番重要なのだということを教えられた一冊になった。きっと、これから類似本が死ぬほど出るのかもね。

Posted by Syun Osawa at 00:59

2010年05月17日

シャーロック・ホームズ傑作選

アーサー・コナン・ドイル/訳:中田耕治/1992年/集英社/文庫

シャーロック・ホームズ傑作選シャーロック・ホームズを読むのなんて、小学生以来かも…。それ以降、ほとんどまともなホームズ体験のなかった僕にとって、宮崎駿氏が制作にかかわっていたTVシリーズの『名探偵ホームズ』だけが唯一のホームズ体験になっている。だから、この本を読んでいても、頭に浮かぶホームズはあのダンディな犬のホームズだった(それだけあのTVシリーズのビジュアルイメージが強かったとも言えるが…)。

とはいえ、僕の脳内がそんな貧しいイメージの世界で覆われていたとしても、ストーリーのほうは単純明快で面白かった。「娯楽小説は時代に依存しているから普遍性を帯びない」なんてことを昔の純文学系の人が書いてた気もするが、あの考え方ってたぶんウソだと思う。150年位前に書かれた作品にもかかわらず、普通に楽しい。

ん?

でもこの楽しさって、やっぱり『名探偵ホームズ』のイメージを引きずっている気がしないでもない。昔のポップさを今のポップさで上書きした感じだったから楽しめたのではないか? この上書き感ってたぶん、ポップカルチャーにおいては重要なことなのか? そう考えると、ホームズ作品の多くが、冗長な心理描写で引っ張られる長編ではなく、シンプルなプロットとキャラクター性で引っ張る短編だったことがポップさを上書きするためのフォーマットを用意したとも言えそうだ。

日本でも小学館が、海野十三の小説を現在の作家の感性でリライトする企画本を出していたし、やはり「かつてのポップは上書きされて、再びポップとして蘇る」という現象には、それなりの信憑性があるかもしれない。いや、ないだろうなw

Posted by Syun Osawa at 01:51

2010年05月16日

Saori@destinyインストア・イベント

2010年4月25日/14:00−14:25/タワーレコード新宿

今回はいつもより1曲多い5曲のインストアライブ。前回 の衣装に続いて、今回の衣装もいい感じ。これまで、ギリギリボールになるくらいの際どいコースに投げ込まれていたSaoriの衣装が、少しずつストライクゾーンに軌道修正されてきて、おっさん的には嬉しい(若者がどう思うかは知らん)。

曲のほうは、おっさんにも優しい仕上がりになっていた。以前にブログで「ファンキーコタ」がどーとかこーとか言ってたりして、僕がアイドルヲタク2周目(SPEEDヲタだった頃…)の時に持っていた、「音楽の質」と「アイドルの質」をファンのよくわからない自意識で結びつけるというあの感じが思い起こされて微妙な気分になっていたので、そこまで自意識バトルやってなかったことに安堵した(え?)。

そうしたファンキーコタ的なノリとも関係なく、普通にSaoriっぽい「 I can't 」という曲は、「サヨナラリヴァイバル」とか「ステンレス・スターライト」並みに好きな曲かも。こういう薄っぺらくて(よく言えば、スーパーフラットで)、切ない感じの曲がほんとよく似合うよなぁ。

この前のAiraのライブも生演奏をかなり取り入れて、人力テクノ風な演出をしていた。Saoriも前回から2台のキーボードを入れているので、今度のライブもそういう方向で何かしらの変化があるのかもしれない。AKB48以降の地下系アイドルの状況を見ていると、生演奏よりも生歌にシフトしている気がしなくもない。これは完全にアイドルとファンの間の距離の近さを競っているために、ショーの完成度よりもライブ感を重視しているせいだと思う。そういうコンテクストで見ると、生演奏とリップシンクの組み合わせはどうなのかという気もするが、この点については、次のライブを見てから考えてみようと思う。

Posted by Syun Osawa at 00:04

2010年05月15日

RIZE

監督:デビッド・ラシャペル/2005年/アメリカ

RIZEユー・ガット・サーブド 』のダンスシーンにかなりやられて、その勢いに乗って見た映画。ゼロ年代に作られたダンス映画の中では『 ユー・ガット・サーブド 』と並んでダンスファンの熱い支持を受けた作品らしい。

といっても、『 ユー・ガット・サーブド 』と違い、こちらはドキュメンタリー映画だ。しかもダンスはブレイクダンスのような普遍性の高いものではなく、アメリカのストリートから生まれたオリジナルのダンスが取り上げられている。そのため、ブレイクダンスのような共通言語としてのダンスの話というよりは、もう少しアメリカの黒人コミュニティと密接したダンスみたいなところに焦点が当てられていたように思う。

僕がグッときたのは、作品の中でインタビューを受けている若者が、最近のヒップホップを批判し、「自分達用にしつらえたものはいらない」と言ったところだった。ヒップホップのウェルメイド感をビースティー・ボーイズ的な方向で過剰に推し進めたりはしないのだ。日本のサブカルチャーの世界では、ゼロ年代にウェルメイドをより過剰に推し進めることで新しい地平を見ようとする作品が多かったし、また批評かもそれを後押ししていた。

この作品の中では、彼らはアフリカの原住民の踊りの中に自分達のアイデンティティを見出し、根源的なダンスを追い求めている。この根源を求めて突き進む強さみたいなものは、日本人の抱えているアイデンティティの揺らぎ(それこそ『SRサイタマノラッパー』的な揺らぎ)とは対局にあるものだろう。

日本のニコニコ動画に上がっている「踊ってみた」タグにあるダンスのユルさと、この作品の中にある根源的なものを追い求めるダンスのどちらが強いのかはわからないが、この両輪を捉えることが、ゼロ年代以降に楽しくダンス文化を消費するためには必要なのかもしれない。なんてことは言わないよ、絶対。

Posted by Syun Osawa at 01:18

2010年05月13日

LightWave Creators Night vol.7

2010年4月24日/19:00−20:15/アップルストア銀座

LightwaveとWebとを絡めたワークショップをするというので、Swift3Dのプラグインを使って3DデータをFLASHのSWFファイルに持ってくる方法でも説明するのかと思ったら、全然違った。レベル高すぎw

LightwaveのデータをそのままSWFファイルに持ってくるのはその通りなんだけど、それをActionScriptで実現している模様。だから、Swift3Dのように3Dで作った映像をカメラワークをつけた状態で1枚ずつ絵にして描き出すという古典的な方法ではなく、FLASHの上で3Dのまま動かしている。

これって、よーするに僕が昔好きだったMegaDemoの世界で、日本でもこういうことをやられている方がいることに驚いた(そりゃいるだろっていう話だが…)。しかも、そのレベルが半端なく高い。これ なんて神でしょ。

orange-suzuki.com の鈴木氏は、Lightwave上でモデリングされた3DモデルをリアルタイムでFLASH上(つまりブラウザ上)に表示するというプログラムまで自作していて、気軽に真似しようというレベルでは全くなかった。デザインやモデリングだけでなく、プログラミングまでやって、しかもそのレベルがめっちゃ高いわけで、いやはや凄い人はいるもんだねぇ。

僕も毎朝、会社で少しずつActionScriptを勉強しているが、プログラミングはたしかの面白い。単純にコンテンツも作れるし、ツールも作れるし、コミュンケーションの場所もつくれる。中学の頃に少しだけBASICを勉強して、すぐやめてしまったが、続けとくべきだったなぁと今更ながらに少し後悔している。

Posted by Syun Osawa at 00:36

2010年05月12日

その科学が成功を決める

リチャード・ワイズマン/訳:木村博江/2010年/文藝春秋/四六

その科学が成功を決める期待してたほどは「ガッ!」とは来なかった。ロンドンの心理学者が書いた本で、偽科学系の本のように世間で一般的に信じられている心理学の「ウソ/ホント」を、科学論文などを参照しつつ私見を述べるといった内容だった。

ニセ科学批判の難しさは、それを完全に否定することもまた難しいことである。そのため、巷で信じられている話をズバズバと斬っていくというほどの爽快感はなく、結構ぼやかされて書かれていた部分も多かった。完全否定するには至らないので、そのあたりにジレンマが残ってしまうのだ。そうしたもどかしさは、日本のニセ科学フォーラムとかでも昔よく話されていた気がする。

先日、僕の家の近所にも、「マイナスイオンはじました」という謎の看板ができていたが、だからといってそれについて「何とかせねば!」という感情も起きてはこない。袋田の滝に行ったときも、親子連れがいて、お母さんが「マイナスイオンがいっぱーい」と言っていたけど、それはそれで別に構わないとも思っている。

そんな風に考えてしまうと、心理学的な領域で用いられる科学的な言葉の真偽などどーでもよく、ただ何となく消費されていっているだけなのだろう。自己啓発本に書かれていることをやんわり否定したところで、それも新たな自己啓発本として消費されてしまう。それでも科学的にマシならそっちのほうがいい…みたいな曖昧なところでの勝負しかできないのがもどかしいところだ。しかも、そんな事に目くじらをたてることの方が大人気ない、そんな雰囲気まで最近は醸成されてきて、真面目な奴がどんどん馬鹿に見えてくる。

うーむ。社会って難しいな。←中二病

Posted by Syun Osawa at 00:06

2010年05月11日

ユー・ガット・サーブド

監督:クリス・ストークス/2004年/アメリカ

ユー・ガット・サーブドニコニコ動画の「踊ってみた」タグからR.A.Bを知ってブレイクダンスにハマったのが2年半ほど前。いつしかYoutubeのブレイクダンスを中心に見るようになって、ようやくこの映画にたどり着いた。

ブレイクダンスをメインに扱った映画として、一部ではかなり話題になっていたらしい。TSUTAYA新宿店には、ダンス系のビデオだけを特集したコーナーがあって、そこでもオススメ作品として取り上げられていた。ダンスって、僕のような門外漢にはまったく視野に入らない世界なんだけど、わざわざコーナーが設けられているってことは、決して少なくない人数の熱い信者によって支えられているジャンルなんだねぇ。

作品自体は、まぁ…良くも悪くもなく普通のアメリカン青春グラフティって感じ。ブレイクダンスだけあって、バトル形式で話が進むぶんだけ、日本の漫画的なエンターテイメントに近かったかもしれない。バトル形式は、どういう経緯で最後の戦いを演出するかってところにすべてが掛かっていて、その中で、ライバルチームと味方チームの良さを引き出しつつ、チームの中の友情やら恋やらの問題を一気に解決していかないといけない。そういう視点で見ると、最後のバトルへ続く話の流れは、上手く演出されていたように思った。ただ、わかりやすい構造があったぶんだけ、そっちに力が注がれてしまい、ドラマの部分はあっさりしていた気もしなくもないが…。

とはいえ、この作品において最も重要なのはダンスの部分であって、ぶっちゃけそれ以上でもそれ以下でもない。特にオープニングのダンスバトルは、ラストの対決よりも秀逸だと思う。これを高校生の時に見ていたら、多分僕も衝撃を受けてダンスにハマっていたんじゃないかな。

Posted by Syun Osawa at 00:21

2010年05月06日

さらば愛しき女よ

レイモンド・チャンドラー/訳:清水俊二/1976年/早川書房/文庫

さらば愛しき女よTwitterで教えてもらって、ハードボイルド小説に初挑戦してみた。この歳になって、ハードボイルド小説の一冊も読んだことがないなんて恥ずかしい話だと言われるかもしれないが、それは逆で、この歳になってもまだまだ初めて経験することがたくさん残っていると思えば、それはそれで生きる希望が涌いてくるものである。ん?

ハードボイルド小説って、よーするにミステリ小説なわけね。…とか書いたら、アシモフ『 鋼鉄都市 』を読んで、SFってミステリ小説なわけね、と書くのと同じくらいのバカにされかたをするかもしれんから、自重する。

薄ぼんやりとした話がハードなシーンで連続的につながれていて、その心地よさと不安定な感じがぐるぐる回ってるうちにオチがストーンッと落ちてくる感じ。この感じってアメリカのサスペンス映画ではわりと見てきた気もするが、小説独特の謎の引っ張り方が僕には不慣れで、文体もなかなか手強く、読むのに少し苦労した。

古きよきアメリカの小説ってこんな感じなのかな? まぁ…嫌いじゃない。つか、面白かった。これがどの程度ハードボイルド小説と呼ばれるものの輪郭をとらえているのかわからんので、とりあえず黙ってあと数冊読んでみることにする。

Posted by Syun Osawa at 01:13

2010年05月03日

ホテル・ルワンダ

監督:テリー・ジョージ/2004年/イギリス・イタリア・南アフリカ共和国合作

ホテル・ルワンダアフリカって至るところで内戦をやっている印象があるので、個々の国がどういう事情で内戦を起こしているかはほとんど知らない。そのため、この映画で描かれているフツ族によるツチ族の虐殺も、少し前まではソマリアで起きたものだと勘違いしていた。そのくらい僕の意識は低かったのだ。

この映画の中で描かれるルワンダの紛争は民族争いだ。ツチ族とフツ族という二つの民族の人口比はおよそ1:9で、ベルギーによる植民地時代は人口の少ないツチ族が政権を握っていたが、独立後にその勢力は逆転した。この両者はIDカードではっきりと区分けされており、しばしばその民族間の対立が政治利用されてきたという歴史がある。そして、この悲劇は起こった。

この悲劇において、フツ族でありながらツチ族を守り続けたのがこの映画の主人公・ポール(ホテルの副支配人)である。妻がツチ族だったということもあるが、国民全体が過激な感情に突き動かされている中で、常に冷静に物事を判断でき、なおかつ勇気を示せる素晴らしい人物だった(実在の人物らしい)。

ルワンダでは二つの民族の対立が紛争の中心になっているが、他の国ではまた別の理由で紛争が行われている。ソマリアでも、ウガンダでも、コンゴでも違っている。共通しているのは、武器が先進諸国から大量に流れていて、殺人が残虐化、泥沼化していることだ。教育が十分ではない地域で、ひたすらに戦士として育てられた子どもが戦争のためだけに生きる。先日読んだウガンダ紛争のルポ(『 g vol.3 』掲載)には、そんな少女戦士の様子が書かれていた。

第二次世界大戦後、日本はものすごい勢いで経済成長を遂げ、先進国の仲間入りをした。その一方で、アフリカの諸国は、未だに数十年前と変わることのない殺し合いを続けている。この違いは何なのか? 様々な理由があるのだろうが、僕にはわからないことだらけである。とりあえず、宮本正興&松田素二 編『新書アフリカ史』(講談社現代新書)あたりから少しずつ勉強してみようと思う。

Posted by Syun Osawa at 02:11

2010年05月02日

「大人」がいない…

清水義範/2006年/筑摩書房/新書

「大人」がいない…サラリーマンをやっていると、職場で交わされる会話が幼稚に思うことがよくある。しかし、そのように聞こえるのは周りの問題ではなく、僕が欝っぽくなっていることのサインだと言われたりもして、実際のところよくわからない。そんなとき、ブックオフで偶然その問いに肉薄してそうなタイトルの本を見つけたので、思わず読んでみた。

大人が居ないという素朴な実感に関しては同意できるし、日本社会が抱えている未成熟な個人を良い面と悪い面の両方から捉えている点もその通りだと思う。特に後者は、東工大のシンポジウム などでも散々語られていた話でもある。今はその未成熟さや椹木野衣氏が言うところの「悪い場所」の良い面がクローズアップされていて、先行世代の素朴な声としての「大人がいない…」という声はただただかき消されてしまう運命にあるのかもしれない。

「その未成熟さをどう捉えるか?」「どう付き合っていくか?」というところに世代間格差とネット利用の有無による格差が潜んでいるのだろう。筆者は2ちゃんねるなどにおける罵詈雑言が飛び交う中でのコミュニケーションに違和感を抱いているが、2010年代にこのコミュニケーションに違和感を感じているようでは、これから先のネットにおける「子ども/大人」の定義はかなり難しくなっていくように思える。この罵詈雑言を脳内で上手く仕分けしながら自分に必要なコミュニケーションだけを行うには慣れが必要なのだ。

例えば、ニコニコ生放送を見ると、匿名で書き込めるコメント欄には酷い言葉が書き込まれることが少なくないが(女性配信者への下ネタコメントなど)、若い配信者は何もなかったかのようにスルーしている。書き込んでいるほうの大人気なさ(実際に大人であればの話だが…)、未成熟さがある一方で、そうした未成熟さと上手く付き合っていく方法を若い人たちは同時に獲得していることにも留意しておく必要があるだろう。

著者の書くような「大人」は、今後どんどん居なくなるのかもしれない。それはこれまで、子どもから大人になるにつれて取捨選択され、切り捨てられてきたはずのものが、今はすべてデジタルデータで温存されてしまうからだ。そのため、時間の概念はどんどん希薄になってしまい、捨てたり忘れたりすることで得られたはずの成熟に、たどり着かなくなってしまうのである。忘却によって達成される「大人」の像はもうないのだ。

しかも、これまでの成長モデルはパターン化され、それをベタに実行しようとすれば再帰的な日常を繰り返さざるを得なくなり、その既視感に苦しめられることになる。そんな平坦な日常をどのように行き、「大人」のモデルを充実感を伴いながら獲得していけるのか。おっさんになった今だからわかることなのかもしれないが、なかなか悩ましい問題だと思う。

Posted by Syun Osawa at 00:20